「なんで焙煎やってるの?」と娘が聞いてきたら、なんと答えよう

暑い日に冷たいカフェオレを

今日も暑かったですね。

今日みたいに暑い日は、
冷蔵庫でキーンと冷やした深煎りコーヒーに、
冷たいミルクをあわせた「カフェオレ」はいかかでしょう。

おすすめは、冷蔵庫で十分に冷やした、氷抜きの冷たいカフェオレ。
香りも味も、薄くならないから。

ぼくは、昨日もコーヒー豆の焙煎をしました。

そのとき、ふと思ったんです。

こんなに毎週の日曜日に焙煎をしていたら
「お父さん、なんでコーヒー豆の焙煎やってるの?」
って、そのうち娘が聞いてくるんじゃないかって。

6才の娘は、ぼくと妻のけんかについて質問する

昨日は、6才の娘の2学期の始業式でした。
ギリギリで終わった夏休みの宿題を茶色いランドセルにつめこんで、彼女は学校に行きました。

だから昨日、一緒に娘の宿題をやったのですが、6才の女の子ってすごいです。
いろんなことが分かっています。

それは娘が、ディズニーのリトルマーメイドの絵を描いたときのこと。


ぼくがそばで、
「アリエルの目は、もっと大きいんじゃない」
とアドバイスすると、娘が急に言い出しました。

「宿題がおわったら、おかあさん、よろこんでくれるかなあ?」
「宿題がおわったら、ほめてくれるかなあ?」
「ほんとうに怒らない?」

と。

ぼくは言いました。

「宿題が終わったら、お母さんは喜んでくれるよ」
「お母さんは褒めてくれるし、もし、それで怒ったら、お父さんがお母さんを怒るよ」

すると、娘が聞きいてきました。

「お父さんとお母さんは、けんかしたことあるの?」

と。

ぼくは正直に伝えました。

今まで3回か4回くらい喧嘩したこと。
多分、もっと喧嘩になることはあったこと。
でも、お母さんが我慢してくれているんじゃないか、と思っていること。

娘は何も言わず、
ゆっくりとぼくの顔を見るのをやめて、
静かにアリエルの絵を描き始めました。

渇いた土に、たっぷりの水が注がれたあとみたいに。

娘はそのまま、アリエルの絵を描き、クーピーで色を付け、宿題を終わらせました。

「なんでコーヒー豆の焙煎やってるの?」と娘が聞いてきたら、なんと答えよう

彼女は、もういろんなことが分かっているんだな、
とそのとき思いました。

だから、

「お父さん、なんで焙煎やってるの?」
「お父さん、焙煎の何がおもしろいの?」

と、急に聞かれるんじゃないかって、ふと思ったのです。

もし聞かれたら、なんと答えよう?

「なんでコーヒー豆の焙煎やってるの?」と娘が聞いてきたときの脚本

だから「お父さん、なんでコーヒー豆の焙煎やってるの?」と娘が聞いてきたときの脚本を準備しました。

おそらく、その日は今日みたいに暑い日。
そして、妻も2才の息子もいない。

どうしてかというと、
娘が何か大事なことを聞いてくるときって、
いつもそうだから。
(昨日もそうだった)

ぼくは娘の質問に答えず、こう尋ねる。

「冷たいカフェオレと、あったかいカフェオレ。今、どっち飲みたい?」

すると娘は
「冷たいカフェオレがいい」
と言いうはず。

なぜなら、外は暑いから。

ぼくは、冷蔵庫から焙煎したばかりのコーヒー豆を出す。
タッパーの蓋をあけ、娘を呼び、

「ちょっと、どんな香りか確かめてみて」

と言う。

娘は、その香りを吸い込んで
「ちょっとだけいい香り」
と言う。

「今の香りを覚えといてな」
と、ぼくは言う。

そして、ぼくはいつものように、
お湯を温め、豆をミルで細かくし、サーバーとフィルターを準備する。

ペーパーフィルターに細かくしたコーヒー豆を入れたとき、
もう一度娘を呼んで、香りを覚えてもらう。

コーヒーを淹れる。
アイスコーヒーを作るので、いつもよりお湯の量は少なくして。

温かい淹れたてのコーヒーを、小さいグラスに少しだけ注いで、味を確かめる。
氷水の上においたボウルで瞬間的に冷ます。

コーヒーが完全に冷えたら、グラスに注ぎ、冷蔵庫から冷やしておいたミルクを加える。

細いスプーンで、ゆっくり、少しだけかき混ぜて、娘の前に置く。

「どうぞ、冷たいカフェオレです」

とぼくは娘に言う。

娘は冷たいカフェオレを飲む。

そして、小さな声で
独り言みたいに
「おいしい」
と言う。

ぼくは答える。

「自分が何をしているときが幸せかを知っていること。それってとても大切だと思う」

「お父さんにとっての幸せは、好きな人に、好きなものを渡せること」

「だから、お父さんはコーヒー豆の焙煎をしているんだ」

どこかの渇いた土に、たっぷりの水が注がれる音が聞こえる。