【スペイン語翻訳】翻訳プロセスと構造分析(フリオ・コルタサルの詩:El breve amor)

スペイン語を日本語に翻訳するプロセスは具体的にどのように進むのか?
スペイン語の構造はどうなっているのか?

それが分かれば「日本語に翻訳されるプロセスでこぼれ落ちるイメージ」が分かります。
また「スペイン語の構造」が分かり「スペイン語の立体的なイメージ」を体験することができます。

今回は「現代スペイン語の詩を日本語に翻訳するプロセス」を細かく言語化します。

題材は、アルゼンチンの作家、フリオ・コルタサルの詩「El breve amor(束の間の恋)」です。

 

今回のポイントは

  • 前置詞から始まる、主語が明示されない長い一文の詩
  • 2つの従属文(副詞節)を意識して、長い一文を軽くする
  • 文の最後に話者の心情と世界認識が分かる

です。

 

 

Contents

スペイン語の翻訳に使用するツール(辞書、文法書、オンライン辞書、オンライン翻訳)

今回は、下記のツールを使用してフリオ・コルタサルのスペイン語の詩を日本語に翻訳しました。

用途としては、辞書をメインで使い、文法書で構造を確認し、オンライン辞書で簡易的に確認します。
オンライン翻訳は、補足として時々「最大公約数的にそれぞれの単語がどのように翻訳されるのか」を確認するために使います。

辞書
西和中辞典[第2版] 小学館
現代スペイン語辞典(改定版) 白水社
DICCIONARIO DE LA LENGUA ESPAÑOLA VIGÉSIMA SEGUNGA EDICIÓN(a/g) ESPASA
DICCIONARIO DE LA LENGUA ESPAÑOLA VIGÉSIMA SEGUNGA EDICIÓN(h/z) ESPASA
CLAVE DICCIONARIO DE USO DEL ESPAÑOL ACTUAL SM

文法書
白水社 中級スペイン文法

オンライン辞書
Coliins DICTIONARY
REAL ACADEMIA ESPAÑOLA

オンライン翻訳
DeepL
Google 翻訳
Weblio 翻訳

 

 

スペイン語:フリオ・コルタサルの詩の翻訳(全文):El breve amor(束の間の恋)

まずは、フリオ・コルタサルのスペイン語の詩「El breve amor(束の間の恋)」を現代日本語に翻訳した全文を紹介します。

日本語翻訳

束の間の恋

彼女は透明な甘い言葉で私を目覚めさせる。
ベッドで深い香りのする農園の夢を見ていた私を。

彼女は私の肌に指を走らせる。
空間に、空中に、私の輪郭を描く。
キスが再び曲線を描き、戻ってくるまで。

小さな火が軽快な焚き火のダンスを始めるために。
突発的に、螺旋や、煙のハリケーンを作ったり、なくしたりしながら。

(どうして、そうならば、私に残されたものは、水浸しになった灰皿の灰だけなのか?
別れの言葉もなく。両手を自由にするという身振り以上のものもなく。)

作者:フリオ・コルタサル

 

スペイン語原文

El breve amor

Con qué tersa dulzura
me levanta del lecho en que soñaba
profundas plantaciones perfumadas,
me pasea los dedos por la piel y me dibuja
en el espacio, en vilo, hasta que el beso
se posa curvo y recurrente
para que a fuego lento empiece
la danza cadenciosa de la hoguera
tejiédose en ráfagas, en hélices,
ir y venir de un huracán de humo-
(¿Por qué, después,
lo que queda de mí
es sólo un anegarse entre las cenizas
sin un adiós, sin nada más que el gesto
de liberar las manos ?)

Auther:Julio Cortazar
引用:6 Poemas de Julio Cortázar que te harán enamorarte de nuevo.

原文と発音

スペイン語の魅力は、発音にあるとぼくは思います。
英語やフランス語にはないゴツゴツした音。

ゴツゴツした音を通して世界を描写する詩人と読者の体験。
日本語とは違う世界が広がっています。

El breve amor
エル ブレヴェ アモール

Con qué tersa dulzura
コン ケ テルサ ドゥルスラ

me levanta del lecho en que soñaba
メ レバンタ デル レチョ エン ケ ソニャーバ

profundas plantaciones perfumadas,
プロフンンダス プランタシオネス ペルフマーダス

me pasea los dedos por la piel y me dibuja
メ パセア ロス デドス ポル ラ ピエル イ メ ディブーハ

en el espacio, en vilo, hasta que el beso
エン エル エスパシオ、エン ヴィロ、アスタ ケ エル ベーソ

se posa curvo y recurrente
セ ポーサ クルヴォ イ レレクレレンテ

para que a fuego lento empiece
パラ ケ ア フエゴ レント エンピエセ

la danza cadenciosa de la hoguera
ラ ダンサ カデンンシオサ デ ラ オゲーラ

tejiédose en ráfagas, en hélices,
テヒエンドセ エン ララファガス、 エン エリセス

ir y venir de un huracán de humo-
イール イ ヴェニール デ ウン ウラカン デ ウーモ

(¿Por qué, después,
ポル ケ、デスプエス、

lo que queda de mí
ロ ケ ケダ デミ

es sólo un anegarse entre las cenizas
エス ソロ ウン アネガールセ エントレ ラス セニーサス

sin un adiós, sin nada más que el gesto
シン ウン アディオス、 シン ナダ マス ケ エル ヘスト

de liberar las manos ?
デ リベラール ラス マノス?

 

 

スペイン語の詩の構造を分解する:構成・主語・メインの動詞・副詞的従属文・終わり方

フリオ・コルタサルの詩「El breve amor(束の間の恋)」の構造はシンプルです。

1組の男女がベッドの上にいる。
それを一方(今回は男性と仮定)が回顧する。

という1文の詩です。

  1. 構成:この詩は1文であること
  2. 主語は彼女/彼であること
  3. メインの動詞は2つ。あとは副詞的従属文が続く
  4. 他動詞levantar・再起動詞levantarseの違い
  5. 2つの副詞的従属文
  6. 終わり方:話者の心情が()で表記される

 

構成:この詩は1文であること

「語順規則の重要性が低い」というスペイン語の特性が生かされ、この詩は前置詞「con(~とともに)」からはじまります。

Con qué…
me levanta…
me pasea…
hasta que…
para que…
(¿Por qué…)

 

主語は彼女/彼であること

また、スペイン語特有の「動詞の主体(主語)を明示する必要性がない」というところから、動詞の主体(主語)が男性なのか女性なのか分かりません。

同時に2人の登場人物の性別が明示されていません。

それが読者の想像力をげます。
※仮定:話者を作者のフリオ・コルタサル(男性)と仮定し、登場する相手の性別を女性とする

 

メインの動詞は2つ。あとは副詞的従属文が続く

「メインの2つの動詞」は「levantar(上げる・起こす)」と「pasearse(散歩する)」

メインの2つの動詞
levantar(レバンタール:他動詞)
①上げる、持ち上げる
②起こす(倒れたものを)立てる
③(視線などを)上げる
④取り除く、除去する、はがす

pasearse(パセアール:動詞)
①散歩する
②[考えなどが、+a+人の頭に]浮かぶ
③のらくらする

 

他動詞levantar・再帰動詞levantarseの違い

「他動詞levantar」と「再帰動詞levantarse」は日常でもよく使う動詞です。

「西和中辞典[第2版] 小学館」によると、他動詞levantarは18個以上の意味が派生しています。
一方、再帰動詞levantarseはより具体的なイメージを作っています。

ここでは「他動詞levantar」のイメージを具体的にみていきます。

levantar(レバンタール:他動詞)

「CLAVE DICCIONARIO DE USO DEL ESPAÑOL ACTUAL SM」によると、levantarの最初の意味は

Mover de abajo hacia arriba.
下から上へ向かう動き

とあります。

これを「levantar(レバンタール:他動詞)」のコアミーニングとして、派生するいくつものイメージを確認していきます。

  1. 上げる、持ち上げる
  2. 起こす(倒れたものを)立てる
  3. (視線などを)上げる
  4. 取り除く、除去する、はがす
  5. 建設する、創設する
  6. 引き起こす、~の原因になる
  7. 向上させる、士気を高める
  8. 扇動する、蜂起させる
  9. (音・音量を)大きくする
  10. 解除する、撤廃する
  11. 作成する
  12. [軍]招集する
  13. (獲物を)隠れ場所から追い立てる
  14. [話]盗む、くすねる
  15. [遊](トランプ)札を切る
  16. (こぶなどを)生じさせる
  17. (馬を)ギャロップで走らせる
  18. 耕す、収穫する

引用:西和中辞典[第2版] 小学館

levantarse(レバンタールセ:再帰動詞)

再帰動詞とは

主語と同じ対象を指示する再帰代名詞とともに使われる動詞

です。

①起きる・起き上がる
②建つ・そびえ立つ
③<風・霧などが>出る
④蜂起する
⑤<3人称で>上がる、昇る

今回の詩は
me levanta…(彼女が私を起こす)
me pasea…(彼女が私の皮膚を散歩する)
なので、再帰動詞ではありません。

 

2つの副詞的従属文

初見でこの詩の翻訳で難しいなと感じたところは

1文で完結していて、それが長いこと

でした。

2つの副詞的従属文(副詞節:SVを持つ副詞文)

hasta que…(到達点・終点・限界)~まで
para que…(運動の方向性)~の方へ向かって

はこの詩の後半を占めます。
それを意識するだけで、文書の重さ、を軽くすることができます。

Con qué tersa dulzura me levanta del lecho en que soñaba profundas plantaciones perfumadas, me pasea los dedos por la piel y me dibuja en el espacio, en vilo, hasta que el beso se posa curvo y recurrente para que a fuego lento empiece la danza cadenciosa de la hoguera tejiédose en ráfagas, en hélices, ir y venir de un huracán de humo- (¿Por qué, después, lo que queda de mí es sólo un anegarse entre las cenizas sin un adiós, sin nada más que el gesto de liberar las manos ?)

 

終わり方:話者の心情が()で表記される

詩の最後でやっと話者の「主観的状況描写」から「主観的感情の表現」に映ります。

ここで、話者の世界に対しての態度が表明されます。

(¿Por qué…)なぜ…?

(どうして、そうならば、私に残されたものは、水浸しになった灰皿の灰だけなのか?
別れの言葉もなく。両手を自由にするという身振り以上のものもなく。)

最初この詩を詠んだ時に、分からなかったイメージは、

小さな火
軽快な焚き火のダンス
突発的
プロペラ(螺旋)
煙のハリケーン
水浸し

という単語でした。

何度も読むうちに、ひとつの仮説が浮かんできました。

 

それは

2人のベッドのそばに置かれたタバコの灰皿

のイメージ。

そこからこの詩のイメージが鮮明になり、日本語への翻訳が急速に進み始めました。

 

 

スペイン語の詩の状況を分析する:登場人物・動作・場所・どのように・状況・話者の疑問

この詩は

私と彼女がベッドにいて、彼女が私に触れる。
彼女の触れ方について私が描写する。
その後、私が心情を表現する。

という構成です。

彼女と私(話者)の登場:protagonists, action, and place(登場人物・動作・場所)

彼らの舞台はベッドの上であることが描写される。
Con qué tersa dulzura me levanta del lecho en que soñaba profundas plantaciones perfumadas,

彼女が私に対して行う行為:How(どのように?)

どのように行為を行うのか?
me pasea los dedos por la piel y me dibuja en el espacio, en vilo, hasta que el beso se posa curvo y recurrente

彼女が私に対して行う行為:situation(どのような状況で?)

「それ」はどこに向かうのか?どのような状況の中で行われるのか?
para que a fuego lento empiece la danza cadenciosa de la hoguera tejiédose en ráfagas, en hélices, ir y venir de un huracán de humo-

私(話者)の疑問:私に残ったものは

取り残されたことへの心情吐露:私に残ったものは灰皿の水だけ
(¿Por qué, después, lo que queda de mí es sólo un anegarse entre las cenizas sin un adiós, sin nada más que el gesto de liberar las manos?)

 

 

スペイン語:フリオ・コルタサルの詩のタイトル:El breve amor

この詩の「El breve amor(エル ブレーべ アモール)」を今回は「束の間の恋」と翻訳しました。
定冠詞が「El」なので、話者にとっては「特定できる恋」であることが分かります。

El breve(エル ブレーべ:形容詞)
①短い、短時間
②簡潔な、手短な
③<言語>[母音が]短音の;[音節が]短い

amor(アモール:一般名詞)
①愛、愛情、恋愛
②恋人、愛人
③[el+]性交
④複数:恋愛関係、情事、口説き、愛撫
⑤<植物>~al uso フヨウの一種

 

 

スペイン語の詩のSVO分析

彼女と私(話者)の登場:彼らの舞台はベッドの上であることが描写される

Con qué tersa dulzura me levanta del lecho en que soñaba profundas plantaciones perfumadas,
彼女は透明な甘い言葉で私を目覚めさせる。
ベッドで、深い香りのする農園を夢見ていた私を。

Verb(動詞)
→levanta(起こす・目覚めさせる)
→動詞の活用形が3人称単数現在形であることでSubject(主語)表を省略している

Subject(主語・動詞の主体):Ella/El(三人称単数:表記なし)
Direct Object(直接目的語):me(私を)
Indirect Object(間接目的語):なし
Adverb of place①(場所の副詞句):de + el lecho(ベッドで)
Adverb of place②(場所の副詞節):en que soñaba profundas plantaciones perfumadas,→どのような状況のベッドか?を描写

levantarse(レバンタールセ:動詞)
①起きる・起き上がる
②建つ・そびえ立つ
③<風・霧などが>出る
④蜂起する
⑤<3人称で>上がる、昇る

Con qué(コン ケ:前置詞):~と(共同・相手)

tersa(テルサ:形容詞)
①滑らかな、張りのある
②澄んだ、透明な
③[言葉遣いなどが]整った

dulzura (ドゥルスラ:形容詞)
①<主に比喩>甘さ、甘美さ
②やさしさ、温和さ
③[主に複数]甘い言葉

 

彼女が私に行うこと:どのように「それ」をするのか?

me pasea los dedos por la piel y me dibuja en el espacio, en vilo, hasta que el beso se posa curvo y recurrente
彼女は私の肌に指を走らせる。
空間に、空中に、私の輪郭を描く。
キスが再び曲線を描き戻ってくるまで。

Verb(動詞):pasea,dibuja
Subject(主語・動詞の主体):Ella/El(三人称単数:表記なし
Direct Object(直接目的語):me(私を)
Indirect Object(間接目的語):los dedos
Adverb of place①(場所の副詞句):por la piel,en el espacio,en vilo
Adverb of time②(時間の副詞節):hasta que el beso se posa curvo y recurrente

pasearse(パセアール:動詞)
①散歩する
②[考えなどが、+a+人の頭に]浮かぶ
③のらくらする

los dedos(ロス デードス:一般名詞):指

por(ポル:前置詞):~のために(動機)

en vilo(エン ヴィロ:副詞)
①宙ぶらりんの
②不安な、はらはらした

hasta que+直接法・接続法
~するまで
すでに経験したこと→直接法
仮定としてこれから起こること→接続法

dibujarse(ディブハールセ:再帰動詞)
①[輪郭が]描かれる
②現れる

posarse(ポサールセ:再帰動詞)
①[蝶、鳥などが]とまる
②[飛行機が]着陸する
③沈殿する;[ほこりなどが]積もる

curvo(クルボ:形容詞):曲がった、曲線

recurrente(レレクレレンテ:形容詞)
①再帰(再現)する
②<医学>繰り返し発生する
③<解剖>[神経などが]反回性の

 

「それ」がどのようにうごくのか?

para que a fuego lento empiece la danza cadenciosa de la hoguera tejiédose en ráfagas, en hélices, ir y venir de un huracán de humo-
小さな火が軽快な焚き火のダンスを始めるために。
突発的に、螺旋や、煙のハリケーンを作ったりなくしたりしながら。

Verb(動詞):empiece
Subject(主語・動詞の主体):fuego lento
Direct Object(直接目的語):la danza cadenciosa de la hoguera tejiédose
Adverb of place①(場所の副詞句):en ráfagas, en hélices, ir y venir de un huracán de humo-

para que(パラ ケ:前置詞):~のために
①目的・用途・宛先・適合性(~するために)
②判断の基準・意見(~としては)
③運動の方向(~の方向に向かって)
④時間(~までに)
⑤再帰表現とともに(心の中で、自分に向かって)
⑥estar para+不定詞(まさに~しようとする)
引用:文法書 白水社 中級スペイン文法

lento(レント:形容詞・副詞)
①遅い、ゆっくりした
②[火力などが]弱い

en ráfagas(エン ララファガス:副詞句)
[風・音・光などの]突発

en hélices(エン エリセス:副詞句)
①プロペラ、推進機、スクリュー
②<数学>螺旋;<解剖>耳輪

ir y venir de(イール イ ヴェニール デ:副詞句)
行ったり来たりする

 

私の疑問:取り残されたことへの心情吐露

(¿Por qué, después, lo que queda de mí es sólo un anegarse entre las cenizas sin un adiós, sin nada más que el gesto de liberar las manos?)
(どうして、そうならば、私に残されたものは、水浸しになった灰皿の灰だけなのか?
別れの言葉もなく。両手を自由にするという身振り以上のものもなく。)

Verb(動詞):es
Subject(主語・動詞の主体):lo
Direct Object(直接目的語):sólo un anegarse
Adverb of place①(場所の副詞句):entre las cenizas
Prepositional Phrases(前置詞句):sin un adiós,
prepositional syllable(前置詞節):sin nada más que el gesto de liberar las manos

después(デスプエス:時間の副詞)
①[時間]後で
②[順序・空間]次に
③[+de]~の後で

anegarse(アネガールセ:再帰動詞):水没する

anegar(アネガール:他動詞)
①<主に誇張>[+de・enで]水浸しにする
②うんざりさせる

el gesto(ヘスト:男性名詞)
①身振り、手ぶり
②<文語>表情、顔つき
③[親切さなどの]表明

 

 

このスペイン語の詩の翻訳で難しかったところ

初見でこの詩の翻訳で難しかったところは

1文で完結していて、それが長いこと

でした。

対応として、下記の方法を取りました。

  • 2つの副詞的従属文(副詞節:SVを持つ副詞文)で区切る
  • 日本語翻訳文を短くする
  • 1文の重さを軽くする

スペイン語の原文は一文なのですが、日本語の翻訳文は10の文(10の句点)を持たせました。

また、スペイン語原文には動詞主体(彼/彼女)が主語として登場していませんが、日本語の翻訳文には2回登場しています。

スペイン語は行動主体を主語として登場させる必要性が低いため、直訳すると、誰の行為なのかが分からなくなりやすいからです。

 

 

日本語翻訳(再掲載)

束の間の恋

彼女は透明な甘い言葉で私を目覚めさせる。
ベッドで深い香りのする農園の夢を見ていた私を。

彼女は私の肌に指を走らせる。
空間に、空中に、私の輪郭を描く。
キスが再び曲線を描き、戻ってくるまで。

小さな火が軽快な焚き火のダンスを始めるために。
突発的に、螺旋や、煙のハリケーンを作ったり、なくしたりしながら。

(どうして、そうならば、私に残されたものは、水浸しになった灰皿の灰だけなのか?
別れの言葉もなく。両手を自由にするという身振り以上のものもなく。)

 

「2人のベッドのそばに置かれたタバコの灰皿」という翻訳後に生まれた仮説

最初、いったいどういうイメージなのか分からなかったのは、

小さな火
軽快な焚き火のダンス
突発的
螺旋(プロペラ)
煙のハリケーン
水浸し

という単語でした。

何度も読むうちに、ひとつの仮説が浮かんできました。

 

それは

2人のベッドのそばに置かれたタバコの灰皿

のイメージ。

 

それがイメージで来たら

小さな火
軽快な焚き火のダンス

は灰皿の上のタバコであることや

en hélices(エン エリセス:副詞句)
①プロペラ、推進機、スクリュー
②<数学>螺旋;<解剖>耳輪

の意味は「プロペラ」ではなく「タバコの煙が描く螺旋」なのでは?

というようにイメージがつながっていきました。

 

もちろんこれは、仮説としての日本語翻訳です。

間違っている可能性は十分あります。

それでも、詩の翻訳にとって連想と意訳は本質的な行為であることを実感するのでした。