La calle(通り)。オクタビオ・パスの詩(スペイン語の翻訳プロセスと構造分析)

スペイン語の詩を翻訳:オクタビオ・パス(メキシコの詩人)

オクタビオ・パスの詩:日本語翻訳

通り
オクタビオ・パス

それは、長く静かな通り。
私は暗闇の中を歩く。
私はつまずく
倒れる。
起き上がる。

私は盲目の両足で、無口な石と乾いた木の葉の上を歩く。
そして、私の後ろにいる誰かが、同じように石と葉の上を歩く。

私が止まると、その人は止まる。
私が走ると、その人は走る。

私は振り返る。
誰もいない。

全ては暗い。そして出口はない。

私は街角のいつもの通りを引き返す。
だれも私を待っていないし、誰も私を追ってこない、その街角を。

そこで私は、ひとりの人を追いかける。
その人はつまずく。
立ち上がる。
そして、私を見て言う。
誰もいない
と。

オクタビオ・パスの詩:スペイン語原文

La calle

Es una calle larga y silenciosa.
Ando en tinieblas y tropiezo y caigo
y me levanto y piso con pies ciegos
las piedras mudas y las hojas secas
y alguien detrás de mí también las pisa:
si me detengo, se detiene;
si corro, corre. Vuelvo el rostro: nadie.
Todo está oscuro y sin salida,
y doy vueltas y vueltas en esquinas
que dan siempre a la calle
donde nadie me espera ni me sigue,
donde yo sigo a un hombre que tropieza
y se levanta y dice al verme: nadie.

引用:5 poemas de Octavio Paz(zenda)
https://www.zendalibros.com/5-poemas-octavio-paz/

動詞と主語の抽出

La calle

Es [una calle larga y silenciosa].
Ando [en tinieblas] y tropiezo y caigo
y me levanto y piso [con pies ciegos
las piedras mudas y las hojas secas]
y alguien detrás de mí también [las] pisa:
si me detengo, se detiene;
si corro, corre. Vuelvo [el rostro]: nadie.
Todo está [oscuro y sin salida],
y doy [vueltas y vueltas en esquinas]
que dan [siempre a la calle]
donde nadie me espera ni me sigue,
donde yo sigo [a un hombre que tropieza]
y se levanta y dice [al verme]: nadie.

スペイン語の詩の音:カタカナ表記で見る

La calle(ラ カジェ)
通り

Es una calle larga y silenciosa.(エス ウナ カジェ ラルガ イ シレンシオサ)
それは、静かで長い通り。

Ando en tinieblas(アンド エン ティニエブラ)
私は暗闇の中を歩く

y tropiezo(イ トロピエソ)
つまずく

y caigo(イ カイゴ)
倒れる

y me levanto(イ メ レンバント(
起き上がる。

y piso con pies ciegos las piedras mudas y las hojas secas(イ ピソ コン ピエス シエゴス ラス ピエデュラス イ ラス オハス セカス)
私は盲目の両足と一緒に歩く。沈黙する石と乾いた木の葉の上を。

y alguien detrás de mí también las pisa:(イ アルギエン デトゥラス デ ミ タンビエン ラス ピザ)
そして、私の後ろにいる誰かが、同じように石と木の葉を歩く。

si me detengo, se detiene;(シ メ デテンゴ、セ デティエネ)
私が停まると、その誰かも停まる。

si corro, corre.(シ コロロッ コレレッ)
私が走ると、彼も走る。

Vuelvo el rostro: nadie.(ブエルボ エル ロロストロ。ナディエ)
私は振り返る。誰もいない。

Todo está oscuro y sin salida,(トード エスタ オスクーロ イ シン サリーダ)
全ては暗く、出口がない。

y doy vueltas en esquina que dan siempre a la calle
イ ドイ ブエルタス エン エスキーナ ケ ダン シエンプレ ア ラ カジェ
そして、私はいつもの通りの街角を引き返す。

donde nadie me espera ni me sigue,(ドンデ ナディエ メ エスペーラ ニ メ シーゲ)
だれも私を待っていないし、誰も私を追ってこないその街角を。

donde yo sigo a un hombre(ドンデ ジョ シーゴ ア ウン オンブレ)
そこで私はある人間を追いかける。

que tropieza y se levanta y dice al verme: nadie.(ケ トロピエサ イ セ レバンタ イ ディーセ アル ベールメ。ナディエ)
そいつはつまずき、立ち上がり、私を見て言う。誰もいない。

スペイン語の特徴は、動詞のドライブ

スペイン語の特徴は、動詞のドライブ感。
つまり…

動詞の活用形が主語を含むため、1語だけで話を進めることができる
というところです。

例:Ando en tinieblas y tropiezo y caigo y me levanto y piso con…

上記13単語の中に
動詞は5つ。Ando,tropiezo,caigo,me levanto,piso
時間的前後関係を表す接続詞”y”が4つ。
前置詞が2つ。
目的語が1つ。
名詞が1つ。

さらにそれらの動詞の活用が1人称単数現在形であること(動詞と主語の一体化と、主語不在でも誤解なく成立すること)が、ストーリーの展開を加速させます。

英語の場合は
I walk in darkness and stumble and fall and I get up and walk around with…

フランス語は
Je marche dans l’obscurité, je trébuche et je tombe et je me lève et me promène les pieds aveugles…

このようにフランス語にも英語にも、動詞の前に主語(I、Je)が必ずついてきます。
でも、スペイン語の場合それは必須ではありません。
ですが、動詞が活用されているため、行動主体は明示されています。

実際にスペイン語を体感したときに感じる会話速度の速さは主に、ここに由来します。
まるで高度なサッカーをしているように、体幹に速いパスが来るのです。

15才、鶴見俊輔、オクタビオ・パス

ぼくは15才のとき、高校を中退しました。
そして、答えを探すようにいろいろな本を読みました。

ぼくの本の読み方は、好きな人物を見つけて、その人が紹介している別の人物の本を読んでいく、という方法でした。

好きになった人物の一人目が、プラグマティズムを日本語に持ち込んだ哲学者、鶴見俊輔でした。

数年後、哲学者の鶴見俊輔と詩人の長田弘がシリーズの本を出版します。
そこに紹介されていた世界中の数々のラテンアメリカ文学の詩人たち。

その中の詩人のひとりが「オクタビオ・パス」でした。

ぼくはスペイン語を習得することを決心します。

それは、18才のときのことでした。