年表.日本語の歴史。紀元592年〜2001年

日本語成立の年表


592-710年
飛鳥時代

1.633年(白村江の敗戦)以降、大陸から漢字が流入
2.漢字(音語)に対応する和語(訓語)として、各地域に多様な言語の言葉の中から、いずれか1つが選ばれた
3.やがて固定化
→和語の固定化(初期日本語の成立)

※日本語とは、あくまで漢字を前提として「漢字が持つ音語」に対応する訓語として生まれてきたもの
※漢字登場以前に列島諸国を統一する単一言語があったわけではない


794–1185年
平安時代の中期

音訓二併性言語の形成
・漢字を媒体として、漢字に「音語」と「訓語」が同時存在する形になる

日本語の始まり
・古今和歌集:10世紀初頭
・土佐日記:紀貫之(935年)
・伊勢物語

日本語の仕上げ
・源氏物語:11世紀初頭

日本語の書体の誕生
・智証大師諡号色書:小野道風(927年)
・屏風土台:小野道風(928年)
・白楽天詩巻:藤原成行(1018年)


1185–1333年
鎌倉時代

禅院が宗語を日本語化する
・大陸に元朝が成立(蒙古族)
・これを避けた集団により「宋の学問/言語/語彙/文字」が日本に疎開
→京都、鎌倉(五山、林下禅院)に移住
→五山:大陸語直輸入機関としての文官政治機構として禅院が機能する
→五山にて「宗語(音語)」「宗元詩」「宗元文」「宗元詩、宗元文訓読分」の誕生
→鎌倉新仏教により大衆化

1582–1868年
近世

二融性の近代日本語
・禅院が弱体化したことで、「音語の訓語化」「訓語の音語化」がおこる(2つの言語の融解)
→「重箱読み」「湯桶読み」
→例:歌舞伎の「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」

1868–1945年
近代:明治時代から第二次世界大戦まで

西欧語の翻訳と活版印刷による平仮名の解放
・西欧語の日本語への翻訳(目的:近代化の達成)

西欧語の翻訳手法
1.漢字の音訓融合状態を、音と訓を原型に戻し、分離しやすくした
2.意味の翻訳:西欧語を訓語の意味で翻訳した
3.発音の翻訳:西欧語を音語で発音させた

印刷(近代活字)の成立:平仮名の解放と等価性の錯覚
1.活版印刷により、平仮名がそれぞれ一文字単位に分解された
→「語」の連続性から解放された
※江戸時代:木版印刷で平仮名は「連続・分かち書き体の語」の形式を崩さなかった

2.「漢字と平仮名の等価性」という錯覚が生まれる
→漢字:一字で表語性を持つ
→平仮名:複数の文字間で連合しなければ表語性を持てない
→「2つは機能的にも等価である」という正確ではない認識が生まれる
→ローマ字書き論、仮名書き論、一音一字限定制の誕生


1945–1970年
現代:敗戦後から経済成長へ

背景
・資本主義経済の高度化
・アメリカ軍事技術の転用としての情報社会化

敗戦後:3つの日本語政策の実施
1.当用漢字による漢字の使用制限
2.歴史的仮名遣いの廃止
3.公用文の横書き化

結果
・語彙(漢語、和語)の縮小
・西欧語翻訳文体の誕生
→日本語における「話し言葉の語彙と文体」の向上には結びつかなかった


1970-2000年
現代:経済成長の終わりへ

・経済と技術に関する英語が日本語に輸入される
・通信化社会の加速

結果
・言語の泡沫化
・軽便な片仮名語の氾濫
→生活語の弱体化
→詩と言葉の無力化


2000年以降
現代:911事件以降の世界

911事件以降「言語泡沫化」の限界が見えてくる

結果
・資本主義経済の終わりの始まり
・反戦運動の登場
・グローバリズムに代わる民衆の国際連帯
・「濃密な生活語」の恢復運動
→再び「詩と言葉が希望と理想を語る力を持つ時代」の予兆


592-710年 飛鳥時代:大陸から漢字が流入する

日本語とは、あくまで漢字を前提として「漢字が持つ音語」に対応する訓語として生まれてきたもの。漢字登場以前に列島諸国を統一する単一言語があったわけではない。

794–1185年 平安時代音訓二併性言語の形成

音訓二併性言語が形成される。漢字を媒体として、漢字に「音語」と「訓語」が同時存在する形になる。

1185–1333年 鎌倉時代:宗語の日本語化

大陸に元朝が成立(蒙古族)したとき、これを避けた集団が京都(五山)、鎌倉(林下禅院)に移住。「宋の学問/言語/語彙/文字」が日本に輸入される。

その後、京都(五山)にて、大陸語直輸入機関としての文官政治機構として禅院が機能し始める。「宗語(音語)」「宗元詩」「宗元文」「宗元詩、宗元文訓読分」が誕生し、鎌倉新仏教により大衆化した。

1582–1868年 近世:音訓の融解

禅院が弱体化することで、「音語の訓語化」「訓語の音語化」がおこり、2つの言語が融解し始める。

1868–1945年 近代:西欧語の翻訳と平仮名の解放

活版印刷により、平仮名がそれぞれ一文字単位に分解され、「語」の連続性から解放された。そして、表意性の高い漢字と、表意性の低い平仮名が「2つは機能的にも等価である」という正確ではない認識が生まれる。

西欧語の翻訳手法が開発され、ローマ字書き論、仮名書き論、一音一字限定制が誕生した。

1945–1970年 現代:西欧語翻訳文体の誕生

西欧語翻訳文体が誕生し、語彙(漢語、和語)が縮小した。

西欧語が日本に入る前、漢字漢文は複数回に分けて日本語に影響を与えてきた。
その度に日本語内部では、文字による分類
・日本語化した漢字
・平仮名
・片仮名

と、音による分類
・音語
・訓語
を組み合わせ、新しい概念を受け入れ、棲み分けた。

西欧語が入ると
・発音は音語
・意味は訓語

で分けて表現した。

それは、ヨーロッパ文明の翻訳に対応するためだった。

1970-2000年 現代:生活語の弱体化

経済と技術に関する英語が日本語に輸入され、通信化社会は加速する。生活語の弱体化は進む。

2000年以降 現代:グローバリズムに代わる民衆による国際連帯

911事件以降、資本主義経済の終わりが始まる。反戦運動が登場し、グローバリズムに代わる民衆による国際連帯に意識が向かい始める。「詩と言葉が希望と理想を語る力を持つ時代」の予兆

参考書籍

タイトル:日本語とはどういう言語か
2006年1月10日初版発行
発行所:中央公論新社
著者:石川九楊

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