自社ECサイト基本戦略の概要をテキスト化した
以下は、個人的にさまざまな書籍や関わった案件を元に、2018年から2022年にかけて改善し続けてきた「事業分析-マーケティング戦略立案資料(約200ページ)」の一部から3枚を選び、テキストに文字起こししたものです。
1. 自社ECサイトの基本戦略の全体像
2. 購入フェーズごとの効果的な施策
3. 購入フェーズ各施策の重要事項
この3枚の資料は、株式会社WACUL 取締役の垣内勇威さんが、2020年9月に発行したデジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?の内容を、より分かりやすく整理し、さらに自分で図表にしたものです。
参照:デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?
垣内さんはデータを元に判断し、構造的に本質を捉え、歯切れ良く表現している方です。自分のデジタルマーケティングのキャリアにおいて、常にチェックし、判断基準の参考にしてきました。
本書は、分かりやすい図解も多くあるのですが、垣内さんの文章の中にも、多くの図式化したい内容が含まれています。そのため、2020年に発行されてすぐ、休日を使って、自分のために分かりやすく再言語化し、図を作りました。その一部が、以下の3枚です。
今更だけど…と思いつつ、テキスト化しました。今の仕事の現場で、「瞬間瞬間に判断する基準」を明確にするために。そして、4年ほど前に作った資料を見返し、改めて思うことを最後にまとめました。
1. 自社ECサイトの基本戦略の全体像
基本:新規顧客用商品と継続顧客用商品を仕掛ける
基本戦略は、新規顧客が最初に買ってくれる商品を見つけて作ることと、その方が2-3回目に買ってくれる商品を見つけて作ること、そして、初回購入商品ごとに2-3回目に買ってくれる商品のレコメンドシナリオを見つけて提供すること、と言えます。
決して、売り手が売りたい商品を作ることではないし、それを初回購入者に売り込むことでもありません。
そこには、いわゆる「地道な業界理解-自社商材理解-顧客理解」に基づく、人の心を理解しようとする根気と、それを反映した商品開発が重要になってきます。
1.新規顧客に売れる商品の開発/仕入/販売
①購入データから 「新規顧客に売れている商品」 を探す
② 競合EC/大手総合ECからトレンド/売れ筋を探す
③①と②の商品在庫を拡充させる
④ トレンドを毎月キャッチアップ
⑤EC担当から仕入れ担当にフィードバック
⑥ 「初回購入者に売れる商品」 に見通しを立てる
2.目標CPAの設定
・CPAはLTVから割り出す
・例 : ¥10,000×5回/年=¥50,000
¥50,000/年x2年=¥100,000 (LTV)
¥100,000×0.03~0.07 (3~7%)
=¥3,000~¥7,000 (目標CPA)
→LTVが改善すれば目標CPAも高くできる
3. Google検索ハック
※別資料にて解説
4.会員登録/リード獲得
・ゲスト購入なし
・購買に必要な情報を入力してもらう
・最後にメール配信のパーミッションをいれる
・次回使えるクーポンを送付する
5.継続購入される
・商品の開発/仕入/販売
・最重要 「LTVを最大化する商材」 を作る
①2~3回目に変われる商品の開発/仕入/販売
→ECは商品がすべて
6.定期購入してもらえる商品を作る
定期購入商品の条件例
・高い粗利
・在庫尽きない
・短期間で消費される
・「Amazon、 実店舗よりよい」 とユーザーが納得
→接触頻度を上げ、 売り上げのベースアップを測る
7.アップセル商品を作る
・購入障壁が低くなっている
・「ついで買い」をねらう
→アップセル商品の開発/仕入れ/販売
2. 購入フェーズごとの効果的な施策
日常生活フェーズ+初回購入フェーズ
目的:新規購入顧客の獲得
KPI:新規顧客獲得数
目標:xx人/月
お客様の状態:欲しい商品はAmazon/楽天/実店舗で購入
施策:高効果/低予算/短期間
①新規獲得狙いの商品開発&運用
②SEOねらいの特集ページ量産
③商品広告の運用
施策:高効果/中予算/長期間
①購買 ~会員登録動線の最適化
②SNSアカウントの育成
施策:効果:低い
①サイトのデザインリニューアル
②サイトの主要導線以外の改善
③ サイト構造への大幅なSEO施策
④ ストックにならない認知広告の出稿
⑤ ロゴ/デザイン/メッセージの刷新
継続購入フェーズ
目的:継続購入顧客の獲得
KPI:売上 (購入者数×単価×頻度)
目標:x,xxx,xxx/月
お客様の状態:お得ならAmazon/楽天以外でも購入
施策:高効果/低予算/短期間
①定期購入狙いの商品開発&運用
②アップセル狙いの商品開発&運用
③ メルマガなどの頻度上げる
施策:高効果/中予算/長期間
① レコメンドシナリオの蓄積
施策:効果:低い
①惰性の企画
② 万人受けねらうアプリ開発
③商品以外の読み物コンテンツ
3. 購入フェーズ各施策の重要事項
日常生活フェーズ
GOAL : 初回購入の促進
ECサイトの構造
・ECサイトの構造: 売値 – 原価
→認知獲得のみの宣伝は行わない
商品開発によって初回購入を促進
① 「メイン商材」 にこだわらない
② 「新規顧客獲得」 「顧客の継続接触」 に有効な商品を開発/仕入れ/販売する
初回購入フェーズ
GOAL : 新規顧客に購入してもらう
まずは 「商品開発」
→「新規訪問者に売れる商品」 を作る
○Amazonを探したけれど見つからない
○何も探していないときに思わず買ってしまう
×何かを探し始めたとき
継続購入フェーズ
GOAL : 新規顧客に継続購入してもらう
1.最重要 「LTVを最大化する商材」 を作る
①2~3回目に買ってもらいやすい商品の開発/仕入/販売
→ECは商品がすべて
2.継続購入のストーリー
・初回購入の商品別に 「2~3回目のストーリー」 を作る
3.定期購入してもらえる商品の検討
条件の例
・高い粗利、在庫尽きない、 短期間で消費される
「Amazon、実店舗よりよい」 とユーザーが納得
→接触頻度を上げる
→売り上げのベースアップを測る
4.アップセル商品を作る
・購入障壁が低くなっている 「ついで買い」 をねらう
→アップセル商品の開発/仕入れ/販売
5.購入金額に応じたインセンティブの付与
・送料無料5000円以上
・1万円以上で限定特典プレゼント
・3点で1万円特集
・セット販売でお得売り
※「継続購入商品」から「次に何を欲しがっているか」 ストーリーを考える
基本構造に関わる情報かどうかを自分で判断すること
これらは、Webマーケティングの現場で日々使ってきた考え。お客様にも何度もお見せし、説明してきた馴染みのあるセオリーです。
これらは約4年ほど前にまとめた資料ですが、作った当時から今までの現場を振り返りながらテキスト化して、以下のように思いました。
・我ながら、良くまとめている。網羅性があるので、ありがちな「しないほうが良い施策を避けるための議論と説得」を、この資料を見ながら、決裁者に向けて行うことができるのも良い
・前提となり基本となる考え方なので、今もベーシックな判断基準として使える。それは、不要な不安を除去し、健全な安心が生まれる条件を整えてくれる
・大事なのは「どの考えが基本構造に関わる情報で、どれが時間とともに変化する表層的情報か」を、自分で判断できていること
・実際に、瞬間瞬間の現場において「いかにしなくて良いことをしないか」「それを判断することがいかに難しいか」「判断できたとしても、実際に関係者を巻き込み、施策を実行することがいかに難しいか」が、身に沁みて分かる
・なぜなら、あまりにも基本すぎて、それは現場の決裁者からは時間がかかる(他の派手な施策と比べ、費用対効果が低い)と判断され、上長へ不安を与えやすく(説得力の高いセオリーを構築できず)、現場に退屈を感じさせる(信じられていないから熱意を伝えきれない)のかもしれない。
・だからこそ、それができる人や組織は多くないし、できると結果的に強くなれる