英語の構造分解プロセス:まだ人類は派生の違う言語習得の適切な全体像と方法論を持っていないという仮説

都市の構造と言語の構造

英語を構造として分解するプロセスについて書いた9000字超の文章です。

「先天的個体差からくる脳の認識傾向」が言語習得のもっとも大きなファクターである、という仮説

あくまで「15才のときに思考に困難を持った人間の再統合への歩み」としてお読みください。一個人の見解です。効率的な方法では決してないし、権威性が高いものでもありません。

基本的にぼくの意見は

言語理解のもっとも大きな要因は、脳の先天的個体差からくる認識傾向である

というものです。
だからこそ、そこにはいつも人間の情熱を発見できる。
と考えています。

「7か国語話者になる」という目標未達から分かったこと

ぼくは19才でスペイン語スペイン文学科のある大学に入学しました。
そこで4年間で「7か国語話者になる」という目標を掲げ、独学を進めました。

それは見事に達成できなかった。

そこで3つの仮説が生まれました。

3つの仮説
1.個人の表現傾向と個人の学習領域という2つのフィルターが、客観的数値化のむなしさを生む
2.言語学習には「言語理解のための周辺学習」が必要なのではないか?という仮説
3.言語理解には脳の認識傾向による個体差があって、それはほとんど先天的なのではないか?という仮説

1.個人の表現傾向と個人の学習領域という2つのフィルターが、客観的数値化のむなしさを生む
まず英語を学ぶとき、

Hearing
thinking
Reading
Writing
Speaking
Conversation

のいずれかのインプット/アウトプットに特化せざるをえない。

それは自分の表現傾向に依存する。

さらに、完全に個人の興味に依存する学習領域の違いがその上のレイヤーとしてある。

つまり、

個人の表現傾向個人の学習領域という2つのフィルターを通ったあとでやっと、客観的数値として記録されること。

深く個人に根差した2つのアウトプット形態が、ダイレクトに客観的数値として社会化される。

それは、肉体的にも精神的にもモチベーションを崩す。

苦手意識が生まれる。

という仮説です。

2.言語学習には「言語理解のための周辺学習」が必要なのではないか?という仮説
例えば、


言語学概論
音韻論
価値論
意味論
翻訳プロセス論
言語活動の全体像把握
適切な学習順序
学習の量と質
学習マネージメント
コミュニケーション理論
心理学
歴史学

異なる文法に臨む場合はとくに。

同族の言語であれば、音とイメージの距離は地続きの感覚が残ります。

でも派生言語が全く違う場合、音とイメージの距離が遠すぎるため、言語という存在を包括的に理解する周辺知識が必要になってくるのではないか?という仮説です。

3.言語理解には脳の認識傾向による個体差があって、それはほとんど先天的なのではないか?という仮説

特殊な家庭環境であればあるほど、言語理解の方法は偏重するはず。

3つの仮説は、まだ人類は、成人した個人が派生の違う言語を習得するときの適切な全体像と方法論を持っていないのではないか?

という1つの仮説に集約されました。

おそらく

・性格のセグメント化:性格や属性で分類された各個人
・複数の学習体系:適切な学習体系、ツール
・適切な時間:各個人に見合った適切な接触時間の総合計。

が、まだ追求されていない(あるいは、もう存在しているけれど普及していない)のかもしれません。

例えば言語学者クリス・ロンズデールの理論「2つの間違った思い込み、5つの原則、7つのアクション」のように。
言語学者クリス・ロンズデールの方法論とぼくの言語仮説

そしていつも最後に辿り着くのは、

たとえ自分が先天的な認識個体差によって言語習得に不得手な認識パターンをもっていたとしても、それが言語習得を諦める理由にはならない

という結論でした。

たとえどんなに回り道でも、ぼくは自分で言語にアプローチし続ける。

全く前進しなくても。

ぼくはスペイン語を話せないまま大学を卒業しました。
そのあとアルゼンチンへの語学留学をしました。

それでも、うまく習得できませんでした。
2年半のアルゼンチン語学学習。言語的失敗の記録

ぼくはその間ずっと言語を愛してきました。

「意味(semantic)」「構造(syntesis)」英語を構造分解する2つの方法

そこでぼくは考えます。

英語の構造を理解するにはどうしたらよいか?

自分の方法で理解すること
他の方法との比較
仮説検証
優れた箇所の取捨選択

などによって「包括的な言語理解の全体像」に近づくことができるはず。

目の前の人に説明できること。
再現性が高いこと。

その地点を目指してきました。

仮説として、外国語を分解するときは大きく2つに分けることにします。

意味(semantic)
構造(syntesis)

今回は、構造的に英語を分解してみます。
※「単語の意味」はべつのエントリで説明します。

構造分解の具体的手順

具体的には、下記の手順で言語を分解していきます。

  1. YouTubeによる文字起こし
  2. 文章を整える
  3. SVOで分解する
  4. 型を取り出す
  • 長く続けることを第一義とする
  • 60-80%の理解で終える
  • 楽しくなくなったら、いったんストップ
    →今すぐに、楽しくなる方法を選ぶ
  • 楽しむ

例えば、ぼくは、20才のときに独学で英語学習を再開して、17年。
2016年のTOEICで690点でしたが、情熱をもって楽しく取り組んでいます。

情熱が継続する方法をみつけること。

熱意が消えなければ、進むことができます。
Enthusiasm Management, これはぼくの生命線です。

Youtubeによる文字起こし機能を使ってローテキスト(生原稿)を手に入れる

まずは、英語を使って仕事(興味がある)をしたいジャンルの好きな人物を特定します。
そして、その人物のYouTube Channelを検索します。

これは、自分に関係する言語内容に集中するためにとても重要です。

  • 自分に関係することで英語に触れる(relevance)
  • 注意する(attention)
  • 意味を付与する(meaning)
  • 記憶する(memory)

特に「意味を付与する(meaning)」というプロセスが簡単にできることが、もっとも大切だと考えています。

なぜなら「意味の移動」が容易になるからです。
すぐに次のプロセス、「signifiant(音と文字)」から「signifié(意味とイメージ)」を連想する、へと進むことができます。

例えば「株」や「投資」に興味がない人が英語でそれらの世界を理解するには、非常に時間と労力がかかります。なにより「興味がない→興味がある」まで持っていく内的必然性の発見に骨が折れるはずです。

多くの本に書かれていることをなぜ改めて言うのか?

それは、ぼくはここで大きく回り道をした経験があるからです。

ぼくは一時期「好き嫌い/関心無関心」の境界がほとんどありませんでした。精神不安が常態化している人のように。

自発する気持ちがない場所に、主体的な意味と価値は発生しない

これは、ぼくが遠回りして得た経験則のひとつです。
(ごくあたりまえのことですが、往々にしてぼくはこのようにして理解を増やしていきます。)

また、

少しでも興味がると思われるものだけを言語習得の対象分野とすること

これは過去のぼくに言いたいことのうちの一つです。

そして、ぼくの場合その人物の1人はカリフォルニア the futur のデザイナー BEN BURNS氏でした。

「Youtubeの文字起こし」のための具体的手順

Youtubeには、文字起こし機能があります。
これを利用して好きな人物の語彙に近づくことができます。

  1. 目的の人物のYoutubeを検索する
  2. タイトルスペースにある右下ボタン「・・・」を開く
  3. 「文字起こしを開く」を開く
  4. 開いたウィンドウの英文テキストを、テキストエディターにコピペする

※「タイムスタンプ表示を切り替える」で時間を非表示にもできます。

1文章=1ピリオド=1動詞という構造に慣れる

つぎは、英文テキストを整えます。

作業の要素が強いですが、動画を再生しながら下記の作業を2~3回繰り返すだけで様々な発見があります。
・あまり難しい単語を使っていない
・シンプルな文法

「文章を整える」ための具体的手順

・1文章に区切る
・1行に改行+聞き取り漏れの修正

1文章に区切る

1文章とは、ピリオドをつける、ということです。

この作業の意味は、
1文章=1ピリオド=1動詞という構造に慣れること
です。

文章は、ピリオドで終わります。
そして、1ピリオドの中に、メインとなる動詞は1つだけです。

これは、
従属文に含まれる動詞や、名詞として使われる動詞、と
メインの動詞を見分けられるようになる
という効果があります。

例えば、

It was one of the best student portfolios that I have ever seen.

Saying goodbye is never easyより引用

この文章でメインとなる動詞はどれでしょう?

それは、

was

です。

つまり、構造的にみるとこの文章は、

< It > was ( one.. )

< S > V ( O )

となり、

A was B.

という

「過去の一点における習慣を表現(be動詞)」する構造だということが分かります。

「接続詞」と「2つの副詞(時間/場所)」の把握が認識負荷を減らす

1行に改行+き取り漏れの修正(途中で何回も停止)

そして、話し言葉特有の「接続詞(and, so… )」や「時の副詞(today)」「場所の副詞」で段落を区切ります。これを行うと、英語話者の話すときの「溜め」の場所やタイミング、息づかいを感じられるようになります。

例えば、こんなふうに。

his name’s Mark.
he’s been in a couple of the future episodes.

and
today
he’s heading back to Richmond.

Saying goodbye is never easyより引用

そしてなにより、「接続詞」「時の副詞」「場所の副詞」この3要素を1文章から取り出す習慣ができると、「言語の認識負荷」を減らすことができます。
これはとても重要なプロセスです。

「SVOで分解する」のための7つの手順

さて、すべての文章を1行に改行にして、「1文章=1ピリオド=1動詞」という構造に慣れてきたら、次は、構造で英語をとらえる感覚を体験します。

英語の文章をみながら、それぞれの単語のまとまりをSVOに分けてみます。

SVOとは

S = SUBJECT(sub:下に + ject:投げる→従属させる→主語)

V = VERB(動詞)

O = OBJECT(ob:その方向へ + ject:投げる→客観的に認識できる物体)

の構造です。

文章の中心には動詞があります。動詞が言語世界を動かします。最初につかむべき要素は「動詞」です。

英語の文章を、私たち日本人が作ろうとするとき、まずはこのSVOの型に触れることは大切です。知っている単語だけでも、文章を数多く作ることができます。

リスニングの際もすべての意味を理解する必要はない、という言語体験における「選択と集中」を得ることができます。

さて、テキストから動詞だけ取り出す作業に進みます。

この作業の意味は、

SVO構造の言語的特性を追体験する
動詞を3タイプに分ける感覚を体験する

というところにあります。

①動詞→主語→対象物(SVO構造の言語的特性の追体験)

動詞をいちばん最初に取り出すことで、このストーリーがどういった動きで進んでいくかを実感をもって感じることができます。

最初に「動詞のイメージが存在」し、次に「主語」のイメージが表れ、三番目に「対象物」のイメージが表れる。
という「SVO構造の言語的なイメージ特性」を追体験すること。

②動詞を3タイプ(DO/BE/HAVE)に分ける感覚

なぜ、現在形を使ったのか?
現在進行形が使われた瞬間とは?
have + 原型動詞ed が使われる感触

などを、英語話者の立場から、手に触る感覚で感じるのです。

動詞を取り出す作業をしながら、頭の中で動詞を以下の3つに分類します。

  • DO動詞 = 誕生:動きが生まれた瞬間(誕生)のイメージ(BE動詞、HAVE動詞、以外のすべての動詞)
  • BE動詞 = 生存:動きが生まれたあと、継続(生存)している。恒常性、習慣、のイメージ
  • HAVE動詞 = 死:動きの継続が終了して、固定化(死)したイメージ

動詞を3タイプに分けることのメリット
1.英語の動詞イメージを大づかみで理解することができるようになります。
2.3タイプの動詞がどういった状況でつかわれるかを感じることができます。

その体験が、英語の動詞を自分の言語にするときの役に立つ分類法になります。

③「単語を見る → イメージ(映像) → 英語」という順序で音から映像と英単語を想起する

実際に行うと、ほとんどの単語が日本人の使用語彙野に入ってきていることが分かります。

そして、この収集した動詞を見ながら、

単語を見る → 日本語 → イメージ(映像) → 英語

という順序で
signifiant(文字・音)とsignifié(イメージそのもの)を移動するのではなく

単語を見る → イメージ(映像) → 英語

という順序で
signifiant(文字の形状・音)とsignifié(イメージそのもの)を移動してみてください。

つまり、

I’m sayingを見たとき

(ぼくは今まさに言うんだ)という日本語signifiant(文字・音)と

(I’m saying)という英語signifiant(文字・音)があなたの頭の中に同時に存在し、

かつ、あなたは、日本語signifiant(文字・音)に引っ張られることなく、英語signifiant(文字・音)に重心を置いたままsignifié(イメージそのもの)を想起する。

そいうい作業を頭の中で行います。

④口語に登場する動詞はほとんど知っている単語が使用される

以下は取り出された動詞です。

英語話者は話すたびに、これらの「英語signifiant」に重心を置いたままsignifié(イメージそのもの)を想起するという作業を習慣的に行っています。私たち日本人が、日本語でそれを行っているように。

am saying
moved
know
brought
‘s been
‘s heading back
‘re gonna grab
hang out
has to go back
miss
HATE
wanted to take
wanted to start drawing
haven’t seen
saw
were
explained
have ever seen
is pursuing
just got done
want to check
meet
‘re gonna film
‘m realizing
bunch
was telling
plucked
got
feel
standing
‘s amazing
gonna close
move out
predict
mean
figuring out
trying
realize
want to do
‘m gonna go try
need
hit me up
getting plucked off
‘s gonna be able to like push
just keep saying
open
planned
look
‘s gonna be
let’s go
LOVE
‘m gonna make
Saying goodbye is never easyより引用

⑤使用される主語は少ない:主語(SUBJECT)を取り出す

主語の数が少ないことに驚くかもしれません。
そして、ほとんどの主語は

I
You
He
It
That
They

でまかなわれています。

ひょっとしたら、私たちが必要とする主語の語彙は、それほど多くないのかもしれません。

⑥頻出する接続詞を取り出し、話者の感覚的溜めの時間を掴む

これをしておくと、自分が話すときに便利です。

英語話者はこれらの接続詞を使って「次に何を言おうか」という感覚的な準備をしていることが感じられます。

and
so
but
here
by the way
Saying goodbye is never easyより引用

⑦好きなフレーズから型を取り出し、自分の言い回しに転用する

好きなフレーズ(phrase)を取り出して自分の言葉にしてしまいます。
「型」にしてしまえば、言えることの数は格段に上がります。なぜなら、言いたい単語をそこに当てはまめればいいだけだからです。

このような記号を使って、SVOをマークアップしてみます。

< > SUBJECT 主語
___ VERB 動詞
( ) OBJECT 目的語

it was one of the best student portfolios that I have ever seen.

I’m in California raight it now, standing in front of gyoza

as you open doors more doors will open

Saying goodbye is never easyより引用

まとめ

今回の構造分解のプロセスをまとめます。

英語を構造分解する2つの方法
・意味(semantic)
・構造(syntesis)

構造的分解の具体的手順
・素材入手:YouTubeで、関心が高い分野のローテキスト(生原稿)を入手
・分解準備:1文章=1ピリオド=1動詞という構造に慣れる
・事前準備:「接続詞」と「2つの副詞(時間/場所)」を把握し、事前に認識負荷を減らす

構造分解
①把握順序:「動詞→主語→対象物」の順序で掴む
②動詞分類:動詞を3タイプ(DO/BE/HAVE)に分ける
③想起方法:「単語を見る → イメージ(映像) → 英語」音から映像/英単語を想起
④動詞抽出:口語に登場する動詞は知っている単語が多用
⑤主語抽出:口語で使用される主語は少ない
⑥接続詞抽出:頻出する接続詞を取り出し、話者の感覚的溜めの時間を掴む
⑦型の抽出:好きなフレーズから型を取り出し、自分の言い回しに転用

構造分解をすると、自分が知っている単語が、案外多く使用されコンテンツが構成されていることが分かります。

そして、「構造分解でインプットした語彙や型」はすぐにアウトプットできる道具になり、あなたを助けます。