人は「言語的理解をするまえの段階」で購入可否の92%が決定している
接客販売において、ボディランゲージはとても大切です。
それは、ほとんどスポーツに近い反復です。
- 対面販売において、人は「言語的理解をするまえの段階」で購入可否の92%が決定している。
これはぼくが現場で実感してきたことです。実際に店舗で商品を販売されている方々は実感として分かるのではないかと思います。
店舗の大きさという要素もありますが、「対面販売という特殊な購買形態」においては、最初の3秒でほぼすべてが決まります。あるいは最初の3秒が最後まで強い影響を与え続けます。または最初の3秒を分析すれば「非購入要因」を仮説立てすることができます。
最初の3秒を100%にした場合の構成
「最初の3秒」には販売員の判断力、経験、哲学が集約されています。
- 肉体表現、佇まい、あり方(服装・身なり・香り・表情・姿勢・動き)55%
- 声のトーン(言葉の内容ではない)37%
- 言葉の内容 8%
この割合を意識し「効果の高いアクション」から順番にアクションプランを構築することが大切です。
つまり、以下のお客様特性を前提にアクションすることです。
- 販売員の言葉の意味がお客様に届くまでに、92%の印象は決定している
- 人は「言葉の内容以外」で多くのことを判断する
- 人は「言葉の意味」を無力化させて、販売員の声を聞いている
販売員は「いかに瞬時に、個別のお客様の欲求段階に合わせた提供物を提示するか」という、脚本と即興劇を作り続けているのです。
声のトーンは社会に対する思想を表現する
お客様は「言葉の意味」よりも「声のトーン」から、メッセージ、意味、社会に対する価値観、世界観を受け取ります。販売員が持つ「社会に対する思想」は隠すことができません。
だからテクニカルに、あるいはスポーツトレーニングのように、下記の態度を習慣化します。
声のトーンの目標(KPI)リスト
- 表情をつけて
- 口角を上げる
- 目尻を下げる
- 微笑むときに、目と口を少し大きめに動かす(表情をつけながら)
- 声の大きさ:お客様の印象に合わせ、アーチ型で届ける(お客様の顔に直線的にぶつかる声の出し方を避ける)
仮説精度を高める情報収集
お客様情報は多い方が良いです。瞬間瞬間に情報を収集し、仮説の精度を高めます。アプローチする前、アプローチしながら、少しづつ仮説を軌道修正し、精度を高めていきます。あるいは常に「複数の仮説の可能性」とともに話を展開します。
優れた販売員は「仮説の数」「仮説の質」「仮説検証の手法」「仮説検証速度」が豊富です。
この観察項目を言語化できている販売員もいますが、おそらく少数です。また、いわゆるセンスのある販売員は、これらを言語化できていなくても、体全体でお客様の状態に反応しています。
観察の順序
以下の順序で観察します。
大きな影響を与える要素から確認していき「これではない要素」をひとつひとつ退けるのです。
- 店舗スタッフの動き
- 複数名のグループの場合
- 新規のお客様orリピートのお客様
- 個人特性
観察項目
観察項目は大きく4つに別れます。
- 店舗スタッフの動き
- 複数名のグループの場合
- 新規のお客様orリピートのお客様
- 個人特性
観察項目1. 店舗スタッフの動き
- すでに他のスタッフが話しかけていないか
- もし話しかけていたら、かぶらない内容で話しかける
- 2人目の販売員であることを承知する
- 2人目の販売員に声をかけられたお客様はストレスフルな状態
もしあなたが「2人目の販売員」になった場合、事前に「1人目の販売員が与えていない有益な何か(情報や感情、感動)」を提供できる準備が必要です。
観察項目2. 複数名のグループの場合
購入可能性のある方がグループのどのポジションにいるか、見定めます。
関係性
- リーダー(現場にいるかどうかを決定する決裁者)
- 購入意図がある人物
- 購入意図がない人物
- リーダーに影響力を持つ人物
- 購入意図がある人物に影響力を持つ人物
もし仮に「購入可能性のある方」がグループの中で目立たない方であった場合、今買っていただく必要はありません。ショップカードをお渡しして「WEBサイトでもご覧いただけますので、実際に見て触っていってくださいね」とお伝えすればいいのです。
観察項目3. 新規のお客様orリピートのお客様
ここも大切です。そして判断が難しい。
何度も店舗に足を運んでくださっているリピーターのお客様は、販売員より商品知識や愛が深い可能性があります。へたな第一声で興味減退させてしまうことだけは避けましょう。
※詳しくは「リピーターの来店者へのお声がけ。これまでの店舗体験をイメージ」で解説します。
- 新規のお客様orリピートのお客様
- 別店舗からのお客様かどうか?
- 目的買い?(来店の80%は無目的)
- 声がけまでの準備観察が成約の80%を占める
- シミュレーション:この服装・雰囲気のお客様にはどのアイテムが似合うか?
観察項目4. 個人特性(観察項目のメイン)
この「個人特性」が観察項目のメインです。
自社のアクセサリーを身につけているかどうか
身に着けている場合のお声がけ
→ありがとうございます!着けて来てくださったんですね!とってもうれしいです!うちのアクセサリーを身に着けて来店してくださることが、本当にうれしいです。励みになります。ありがとうございます!
ポイント
- 喜びと感謝を伝えることだけに特化する
- ・セールス要素は排除する
- ・個人としての感情を伝える
→お客様の心理に「来店しただけで何かを与えている」「何も購入する気がなくてもここにいていいんだ」という有力感とポジティブネットワークを提供
商品への関心の度合い
手に持ったか、立ち止まって3秒以上経過したか、同じものを5秒以上見ているか
→「立ち止まって3秒以上」であれば、その商品に深く興味を持った証拠と言えます。
表情
商品に集中しているか、流し見か、会話に夢中か、商品に気を取られているか、見ていないか
→販売員は一瞬の表情から多くの情報を得て、複数の仮説を作っています。
服装カテゴリ
服装カテゴリの知識はあればあるほど役に立ちます。どのように役に立つかというと、一個人として「その服装のどこが好きかという意見」を事前にストックすることができる点です。また「服装カテゴリ」によって商品との相性も、ある程度類型化できるため「精度の高い提案」を複数準備することができます。
- 天然素材
- キャリアウーマン
- 子育て母親コーデ
- ブランド特化
- ナチュラル系
- モード系
- ストリートカジュアル
- スポーティー
- 無個性
- コスプレ
- キャラ特化
配色:メインカラー・ベーシックカラー・アクセントカラー
初見の1秒以内で、お客様が身につけている服装や装飾品、バックの「メイン3色」を特定します。そして「メインカラー」「ベーシックカラー」「アクセントカラー」に3分類します。
- メインカラー:30%
- ベーシックカラー:65%
- アクセントカラー:5%
服装に気を使っている方の多くは、上記の配色割合で街を歩いています。
ご試着いただくアクセサリーの色
ご試着いただくとき、3つの配色の「メインカラー」か「アクセントカラー」と同じ色のアクセサリーをご試着いただくことがポイントです。
なぜなら
- アクセサリーが服装に馴染みやすい
- 試着いただいたお客様の満足度が上がる
- ちゃんと見てくれている感、が伝わる
からです。
小物、アクセサリー
小物とアクセサリーから「趣味カテゴリ」を分類します。販売員はここで「趣味カテゴリと親和性の高い自社商品」をリストアップ。ここでも「分類」と「照合」が精度の高い判断を支えます。
シルエット/バランス
お客様の服装の外郭のシルエットを把握。
- タイト
- スタンダード
- オーバーサイズ
一般的に
- 対極のシルエットバランスのアクセサリー
- あるいは同タイプのシルエットバランスのアクセサリー
が、合いやすいです。
素材
お客様が身につけているものから好みの素材、嫌いな素材を判断します。
髪型/髪の色/髪留め
女性に取って髪はとても大切です。もしあなたが男性で女性の髪型にあまり関心がないようでしたら、一度、書店に行って女性の「ヘアースタイルブック」をパラパラとめくってみて、その世界に触れてみてください。
日常レベルで女性の髪型への関心を持ち、髪に装飾品を着けることへの習慣に興味を持ちます。
当事者としての体験が「トークに真実味」を提供します。
メイク
「どのように自分自身をメイクをしているか」という姿勢から、「世界に対する自己表現思想」がある程度わかります。販売員は、メイク情報からも表現タイプを類型化し、相性が良い自社商品を頭の中でリストアップします。
荷物
荷物が多い少ない。荷物の種類。お土産の有無。
- ゴミの有無→持っていたら、「よろしければお捨てしましょうか?」と伺う
- 買い物袋の有無とその量
ピアスホールの有無の確認
髪で隠れている方はピアスホールを目視できません。そこで以下のようにアプローチします。
例:特殊なイヤリングを試着いただく場合
- 販売員:これ、着け心地がとっても面白いイヤリングで…(関心を喚起)
- 販売員:お客様、ピアスホールあけてらっしゃいますよね?(あけている前提で質問)
- お客様:はい
- 販売員:そうですよね。アレルギーの方にも、重ね付けもすることもできるタイプなので、ぜひ、今後の参考に、付けてみてください
- 試着(話しながら、「よかったらぜひ」というジェスチャーを加え、試着受け入れ体制がある方かどうかを0.1秒単位で判断し、一瞬でスッと装着する)
- 販売員:そうですよね。アレルギーの方にも、重ね付けもすることもできるタイプなので、ぜひ、今後の参考に、付けてみてください
- お客様:いいえ
- 販売員:あっ、そうなんですね!ぜひぜひ、付け心地がとっても面白いので、付けるだけ付けて(or 全然買っていただかなくて大丈夫ですので)、今後の参考にしてください!すごく面白い付け心地なんです!
- 試着(話しながら、「よかったらぜひ」というジェスチャーを加え、試着受け入れ体制がある方かどうかを0.1秒単位で判断し、一瞬でスッと装着する)
- 販売員:あっ、そうなんですね!ぜひぜひ、付け心地がとっても面白いので、付けるだけ付けて(or 全然買っていただかなくて大丈夫ですので)、今後の参考にしてください!すごく面白い付け心地なんです!
「接客・販売体験」の60%を占めるファーストアプローチ
ファーストアプローチの質が「接客・販売体験」の60%を占めます。一番難しく、とても大切な領域です。「店舗理念」と「販売員個人の理念」がダイレクトに表現されます。
ファーストアプローチの特徴
- 最も属人的になりやすい(販売員固有のバリエーションに溢れている)
- 体調の状態が直接現れる
- 接客販売スキルが顕著に露呈される
- 販売員個人の哲学が顕著になる
ファーストアプローチの目的
それは
「お客様への最小限の負荷」で「適切量のコミュニケーション」を育てる導入とすること
そのために、以下のことに気をつけます。
- 素早く(入店直後が、お客様の関心が最も高い状態)
- 適切な大きい声で
- お客様の頭の後ろにアーチ状に言葉を投げかけるイメージで
- 知人/友人/赤ちゃんへするような親しみのある笑顔
- はい/いいえ、で答えられる質問(クローズドクエスチョン)
お声がけのタイミングと近づき方。「パーソナルテリトリー」への大胆な接近
「初対面のお客様のパーソナルテリトリー」への参加の了解を非言語から行います。
不安感を除去する態度と、適切な順序で。
お客様への近づき方
- ご近所の方々に挨拶をするときと同じ
- 気配を与えてから声をかける(お客様の後ろではなく、横2m位→事前に気配を与える)
- 〇手にとって3秒(深呼吸後)
- ×手に取ったら即
- 商品配置を整え、右側から視界に入りながら、1.5~2mの範囲で
- ペアのお客様には、会話の内容をオウム返しする
お客様の今日一日をイメージし、お客様に高い関心を寄せる
「リアル店舗来店の前提条件」を理解します。
すると「非購入者に対する目標設定」が必須であることがわかります。
リアル店舗来店の2つの前提条件
以下の2つの前提条件の中で接客販売が行われます。
- お客様は「出発地と目的地の間の長いプロセスの間の平均30秒ほど」この店舗にいること
- 来店の約80%は無目的来店であること
つまり、持ち時間30秒の「無目的来店者80%」と「目的来店者20%」。それぞれに異なるアプローチを瞬間瞬間で行うこと。それがお声がけ第一声の条件です。
ここで大切な要素は
ご来店いただいた方々の未来への想像力
です。
- 今、どこから来たのか?→その感想を尋ねる
- これから、どこへ行くのか?
- 京都へ来たのはいつ以来か?
- 何日間、京都に滞在しているのか?
- 昨日はどこへ行ったのか?→その感想を尋ねる
- 明日はどこへ行くのか?
無目的来店者の店舗滞在時間は平約10-15秒
無目的来店者の店舗滞在時間は「平約10-15秒」です。
そして、無目的来店者に対する目標設定は「滞在時間の最大化」です。