説明商品を扱う実店舗における接客販売マニュアル -購入者と販売員の意志決定プロセス-

この記事は、2013~2106年にかけて作成した「アクセサリー販売員のための接客販売マニュアル」をベースとしています。

当時の「購入と販売の心理」についての理解とノウハウを、5年間Web業界に在籍した現在のWebマーケター視点から再構成し、リアル店舗での「販売心理」と「購買心理」の体系を明らかにした、約2万字の記事です。

この記事の結論から言うと

まずは、

自分との対話を行い、
店舗の商材と自分の思想が一致するところを見つけ
1-2分で信頼関係を構築する方法を身につけ
接客販売の4つのプロセスを身につける。

 ※ファーストアプローチ、セカンドアプローチ、商品説明、クロージング

その方法として
ボディランゲージを知り、
・以下の4つの観察項目を常に行い、
  店舗スタッフの動き
  複数名のグループの場合
  新規のお客様orリピートのお客様
  個人特性(メインの観察項目
パーソナルテリトリーへの接近方法を身につける。

基本的な行動条件は、
持ち時間30秒で「無目的来店者80%」と「目的来店者20%」のそれぞれに異なるアプローチを行い、滞在時間を最大化すること。

そして、
・作業をしながら待つ「動待機」を行い、
冒頭の1〜2秒に共感と結論の単語がくる「最小単位の効果的なセリフ」を複数作り、セリフセットの有効性を日々検証すること

です。
以下、その内容を詳しくお伝えします。

この文章をまとめている2021年9月時点で、2013~2106年の京都市の観光経済を振り返ると、多くの点で違いを感じます。当時はまだ「予兆としてのオンライン購買」も、今ではなくてはならないインフラになりました。

それと並行して「リアル店舗に行って商品を購入する意味」も変わりました。

Contents

リアル店舗で商品購入する意味

・会社の理念を支持することの表明行為としての店舗訪問
・価値観の再確認
・店舗訪問することで「社会に対する倫理の生態系」を形成していくプロセス
・個と個の繋がりを体感するための時間と空間

2016年当時の私が懸命に構築した「接客販売マニュアル」は、古びたところや過剰な表現が散見されます。

と同時に、社会を良くしていこうとする企業理念は、絵空事ではなく、勤務する意義と購買行為の前提条件になりつつあります。当時から私が予感していた「誠実なブランディング」の切実さは、今の方が高まってきているようです。

2016年から2021年の間、WEB業界で5年間働いて体感してきたこと

それは

マーケティングの限界とブランディングの必然性

です。

「スキルの総体としてのマーケティング」主導の戦略立案を終わらせ、「誠実なブランディング

を土台とした健全なマーケティング」を行うための第一歩として、この記事を公開します。

2013-2106年の当時の状況

私は、2013年11月から2016年8月にかけてアクセサリーショップで販売員として仕事をしていました。入社して1年後、実店舗の店長職を任せていただき、販売スキルの体系化と教育に集中しました。

当時の私のテーマは

「購入心理の解明」と「販売プロセスの再現性」

でした。

原理と法則と慣性を体系化し、心理と感情の成り立ちを理解し、15秒前に会ったばかりの方の「購入決定プロセス」に道を整え、最後まで同伴すること。

京都市の観光地にあるアクセサリー店で、私以外の20人ほどの販売スタッフは全員女性でした。
私は、過去数年間の売上を分析し、曜日・シーズン・イベントごとの対策を考え、個人の販売プロセスと、チームとしての販売プロセスを接客が苦手なスタッフに共有しました。

それは文字通り悪戦苦闘の日々の始まり。

▼販売員としての日々に関する記事はこちら

売れる販売員になるために行ったこと

Dさんの語り口は、まるで映画を見ているように聞くものに映像を呼び起こした

店長になりしばらくして「自分が実践してきた接客販売スキルを、後輩の販売員のために役立てたい」と考えるようになりました。なぜなら接客販売業は、見た目以上に過酷で、精神を消耗し、使い捨てのように人の入れ替わりが激しい現場だったから。

そして接客販売はとても難しかったから。

売れる販売員は決して売り方を後輩に教えることはなく、独自の優れた方法は属人化したまその人物と一緒に社外に消えていく状態。スキルが組織に蓄積されないので、売上はどんどん販売員に依存するようになり、結果、離職率は高まります。そして職場の雰囲気は殺伐としていく。

なんのとっかかりも再現性もないような「接客販売」を体系立てて説明し、内気な販売員(かつての自分)のために役立つ資料を作りたい。

そう思うようになったのです。

接客販売の全体像とプロセス

課題教育型リアル店舗の特徴と課題

2016年の接客販売マニュアルの分析と体系化_自己対話

課題教育型リアル店舗の特徴を一言でいうと

約1〜2分で信頼関係を構築できなければ、そもそも話すら聞いていただけない

つまり「人として信頼していただくこと」が最初にして最大の課題

である、ということです。

そのために、世界に対する個人として、どのような倫理観と価値観を備えているか、自分との対話を行うことになります。具体的には、以下の項目について自己対話を行ったのち、それを会話構成の土台とします。その上に成り立つ会話であれば、徐々に信頼関係の構築に成功する確率が上がります。

1.社会性(会社/自分の実績・成り立ち・特徴・資格・キャリア・お客様の声)

2.愛情、深い関心(まず、自分から相手のことを好きになる。相手のことを思いやる)

3.自己開示(自分の失敗・トラウマを赤裸々に伝え、相手に共感を提供する)

4.価値観(自分の好き嫌いを明確に表現する)

5.理想世界(お客様を連れて行きたい理想の未来をお伝えする)

販売員の目的(KGI)と目標(KPI)

販売員の目的(KGI)は以下の4つです。

・組織が実現しようとしている価値観を紹介すること

・その世界への参加を促すこと

・共有と育成に値する世界観を整え、提示するのに然るべきタイミングを身につけること

・リピーター、継続購入、ファン、価値観の支持者と長期的関係性を構築すること 

そのための手段として、私達販売員は以下の4つのアクションを、店舗に足を運んでくださった方々に実行します。

1.「感動の体験」を提供する

2.「まだ知らない課題」をお伝えする

3.「課題解決策」をお伝えする

4.それによって「より望ましい未来」がその先にあることを提示する

原則として「購入の有無に関わらず」入店してくださった方々には「体験」「感動」「喜び」「感情的共感」「知的好奇心」を提供します。

販売員の目標(KPI)リスト

・商品名、店舗名を知っていただく(認知)

・課題を認知していただく(課題教育)

・体験していただく(体験)

・覚えていただく(体験記憶)

・できるだけ長い時間を過ごしていただく(滞在時間の最大化)

・ショップカードを受け取っていただく(有形物の無償提供)

・帰宅後、ネットで検索していただく(想起行動:パソコン)

・帰宅途中、スマホで検索していただく(想起行動:スマホ)

・アクセサリー購入時の選択肢として第一想起していただく(第一想起)

・購入していただく(購入)

・使って感動していただく(感動体験)

・世界観への参加を楽しんでいただく(価値観の共有、世界観への参加)

・世界観を快く思っていただく

接客販売の4つのプロセス

2016年の接客販売マニュアルの分析と体系化_接客販売の4つのプロセス

課題解決型商材のリアル店舗における「接客販売プロセス」は4つの段階分けることができます。

1.ファーストアプローチ

2.セカンドアプローチ

3.商品説明

4.クロージング(1~3が良ければ、何もしなくてよい。購入行為の決定権は我々にはない)

以下、これらの詳細を説明します。

ファーストアプローチ

2016年の接客販売マニュアルの分析と体系化_ファーストアプローチ

最も大切な局面です。お客様の潜在意識「買わされるのでは?」という「デフォルトのネガティブ認知」を顕在化して裏返します。

1.「不安感」「恐怖感」「ストレス」を一掃する →でもどうやって?

  →その具体的方法は販売員のボディランゲージ概論に書いています。

2.安心していただく

 →「安心感」を提供する。つまり「買わせようとする者ではないです」と伝える

3.その後に提供する「安心感」「信頼感」のための道筋を整える

  →この段階では、あらゆる局面で「売ろうとしない積極性」を維持する

   →そのための「即興的表現力」を身につける(舞台の上の俳優のように)

セカンドアプローチ

「ファーストアプローチと同じ効果を生む違う手法」を行うことで、共有時間を長く保ちます。

Q.それは何のために?

A.「2者間だけの関係性」を蓄積するためです。そのためには「魅力的なささやかな出来事」を認知するための「時間」の確保が必須になります。

お客様の購入プロセスの途中で販売員がバトンタッチすると「購入確率」が激減する理由はここにあります。お客様は「出会った最初の印象を継承しながら」購入プロセスを歩いていきます。

セカンドアプローチの目標(KPI)リスト

・さらに安心していただく

・第二声目で「さらに深い安心感/信頼感の提供」の基礎を作る

・お客様の心の動きに寄り添う

・積極的受動態:「購入行為の決定権」は我々にはない

「積極的受動態」とは私が作った言葉です。「購入行為の決定権」は販売員には全くないという思想をもとに、お客様の興味の度合いに合わせて、限られた時間を楽しんでいただくためにあらゆるコミュニケーションを測る、という態度です。

商品説明

1と2を経験していない商品説明はとても危険です。販売経験のない方が最初に感じる「販売の難しさ」も、ここで発生します。商品説明をし始めたとたんに、お客様の気持ちが冷める、という現象が生まれます。

1と2を経験した2人(販売員とお客様)は、心地よい関係性のまま、以下のステージに進みます。

そこで販売員は「販売行為と購入行為」の核心に近づいて行きます。

商品説明の目標(KPI)リスト

・「事実と効果」のセットフレーズ

・2歩先の動きと台詞

 →その後「お客様の不満・不安・欲求を解消するもの」として商品紹介

  →購入の有無に関わらず、リピーターになっていただく関係作り

クロージング

1~3のプロセスを経たあとに現れる販売員のアクションリストは?

それは「沢山のしてはいけないこと」リストと「数少ない一貫した姿勢」です。

販売プロセスの全体像をまだ体感していない販売員は、この段階のお客様に対して「適切ではない言葉と態度」を表現します。反対に、販売プロセスの全体像を理解している販売員は「細心の注意を払った思慮深い態度」を表現します。

クロージングの目標(KPI)リスト

・1~3の質が良ければ、一段回引いて、お客様の内部で発生している購入決定プロセスを見守る

・「購入行為の決定権は我々にはない」ことを肝に銘じる

・「言いたいこと」ではなく「お客様の内部の購入障壁」を仮説立て、寄り添う

・多くの「してはいけないこと」を知り、それをしない

信頼関係は自分との対話から始まる

会話の前に準備する5つの姿勢

以下の5つの姿勢を人として準備します。会話はそのあとです。

これらが土台にあることが、信頼関係構築と、予期せぬ事態への対応力を生みます。

世界に対する個人として、どのような倫理観と価値観を備えているか、自分との対話を行うことになります。

1.社会性(会社/自分の実績・成り立ち・特徴・資格・キャリア・お客様の声)

2.愛情、深い関心(まず、自分から相手のことを好きになる。相手のことを思いやる)

3.自己開示(自分の失敗・トラウマを赤裸々に伝え、相手に共感を提供する)

4.価値観(自分の好き嫌いを明確に表現する)

5.理想世界(お客様を連れて行きたい理想の未来をお伝えする)

販売員が発する「エネルギーと方向性」が信頼関係を生む

信頼関係は、販売員が発する「エネルギーと方向性」を、お客様が「感知する」ことで発生します。

そして販売員は自覚無自覚の差はあっても、常に自分の「エネルギー」と「方向性」をマネジメントしています。

具体的に言うと

エネルギー=会話のテーマ

方向性=購入構成のプロセス化(ファーストアプローチ、セカンドアプローチ、商品説明、クロージング)

となります。

販売を前提としたアプローチをされることで反射的に生まれる感情

私達は「販売者:購入者」という対立構造によってネガティブな経験をしてきました。それによって、原則的に人は「他者から販売を前提としたアプローチをされること」を恒常的に嫌うようになりました。

よって、反射的に

  • 無関心
  • 無視
  • 怯え
  • 不信
  • 不安
  • 苛立ち

を感情的にリアクションします。

始まりからネガティブスタートの「対面式接客販売」において、販売員はどのように信頼関係への道を構築していくのでしょうか。

信頼関係を生むために「人間としての自分」の表現経路を構築する

信頼関係を形成するためには、商品や、販売員以前に「人間としての自分」の表現経路を構築することが前提になります。

そのために販売員は

・自分が所属する組織に対する自然な好意

・商品が実現する理想世界への情熱

・自分との思想の一致

の3つが重なる領域に自分を発見する必要があります。

それは、嘘がつけない領域です。

なぜなら「自分自身への偽り」は、ファーストアプローチの0.3秒以内に他者に伝わります。
そして「一度表現された偽り」を消すことはできず、接客の終わりまで影響を与えます。

発話のための3つの基礎姿勢

ここまできて初めて、発話のための3つの基礎姿勢に到着します。

  • まず、自分の素直な気持ちを伝える(商品を媒介としない状態での、人から人への思いやりの気持ち)
  • 「なにひとつ購入に関するアクションを期待していないこと」を伝える
  • 再び、繰り返し、自分の素直な気持ちを伝える

信頼は最上級の関係性です。
その場所にいたるまで「段階的なプロセス」を少しづつ着実に重ねていきます。

販売員のボディランゲージ概論

人は「言語的理解をするまえの段階」で購入可否の92%が決定している

2016年の接客販売マニュアルの分析と体系化_購入心理

ボディランゲージはとても大切です。

ほとんどスポーツに近い反復です。

対面販売において、人は「言語的理解をするまえの段階」で購入可否の92%が決定している

これはぼくが現場で実感してきたことです。実際に店舗で商品を販売されている方々は実感として分かるのではないかと思います。

店舗の大きさという要素もありますが、「対面販売という特殊な購買形態」においては、最初の3秒でほぼすべてが決まります。あるいは最初の3秒が最後まで強い影響を与え続けます。

または最初の3秒を分析すれば「非購入要因」を仮説立てすることができます。

最初の3秒を100%にした場合の構成

「最初の3秒」には販売員の判断力、経験、哲学が集約されています。

1.肉体表現、佇まい、あり方(服装・身なり・香り・表情・姿勢・動き)55% 

2. 声のトーン(言葉の内容ではない)37%  

3.言葉の内容 8%

つまり、

・言葉の内容がお客様に届くまでに、92%の印象は決定している

・あるいは言葉を聞いた人は「言葉の内容以外」で多くのことを判断する

・また人は「言葉の意味」を無力化し、意味のない背景と変化させることができる

・この割合を意識し「効果の高いアクション」から順番にアクションプランを構築する

「いかに瞬時に、個別のお客様の欲求段階に合わせた提供物を提示するか」という瞬間的な即興演劇と脚本を販売員は作り続けます。

声のトーンは社会に対する思想を表現する

お客様は「言葉の意味」よりも「声のトーン」から、メッセージ、意味、社会に対する価値観、世界観を受け取ります。販売員が持つ「社会に対する思想」は隠すことができません。

だからテクニカルに、あるいはスポーツトレーニングのように、下記の態度を習慣化します。

声のトーンの目標(KPI)リスト

  • 表情をつけて
  • 口角を上げる
  • 目尻を下げる
  • 微笑むときに、目と口を少し大きめに動かす(表情をつけながら)
  • 声の大きさ:お客様の印象に合わせ、アーチ型で届ける(お客様の顔に直線的にぶつかる声の出し方を避ける)

観察。仮説精度を高める情報収集

お客様情報は多い方が良いです。瞬間瞬間に情報を収集し、仮説の精度を高めます。アプローチする前、アプローチしながら、少しづつ仮説を軌道修正し、精度を高めていきます。あるいは常に「複数の仮説の可能性」とともに話を展開します。

優れた販売員は「仮説の数」「仮説の質」「仮説検証の手法」「仮説検証速度」が豊富です。

この観察項目を言語化できている販売員もいますが、おそらく少数です。また、いわゆるセンスのある販売員は、これらを言語化できていなくても、体全体でお客様の状態に反応しています。

観察項目

観察項目は大きく4つに別れます。

・店舗スタッフの動き

・複数名のグループの場合

・新規のお客様orリピートのお客様

・個人特性

観察の順序

以下の順序で観察します。

大きな影響を与える要素から確認していき「これではない要素」をひとつひとつ退けるのです。

店舗スタッフの動き

複数名のグループの場合

新規のお客様orリピートのお客様

個人特性

店舗スタッフの動き

 ・すでに他のスタッフが話しかけていないか
  →もし話しかけていたら、かぶらない内容で話しかける
  →2人目の販売員であることを承知する
   →2人目の販売員に声をかけられたお客様はストレスフルな状態

もしあなたが「2人目の販売員」になった場合、事前に「1人目の販売員が与えていない有益な何か(情報や感情、感動)」を提供できる準備が必要です。

複数名のグループの場合

購入可能性のある方がグループのどのポジションにいるか、見定めます。

関係性

リーダー(現場にいるかどうかを決定する決裁者)

購入意図がある人物

購入意図がない人物

リーダーに影響力を持つ人物

購入意図がある人物に影響力を持つ人物

もし仮に「購入可能性のある方」がグループの中で目立たない方であった場合、今買っていただく必要はありません。ショップカードをお渡しして「WEBサイトでもご覧いただけますので、実際に見て触っていってくださいね」とお伝えすればいいのです。

新規のお客様orリピートのお客様

ここも大切です。そして判断が難しい。

何度も店舗に足を運んでくださっているリピーターのお客様は、販売員より商品知識や愛が深い可能性があります。へたな第一声で興味減退させてしまうことだけは避けましょう。

※詳しくは「リピーターの来店者へのお声がけ。これまでの店舗体験をイメージ」で解説します。

・新規のお客様orリピートのお客様 

・別店舗からのお客様かどうか?

・目的買い?(来店の80%は無目的)

  →声がけまでの準備観察が成約の80%を占める

・ シミュレーション:この服装・雰囲気のお客様にはどのアイテムが似合うか?

個人特性:観察項目のメイン

この「個人特性」が観察項目のメインです。

自社のアクセサリーを身につけているかどうか

身に着けている場合のお声がけ

→ありがとうございます!着けて来てくださったんですね!とってもうれしいです!うちのアクセサリーを身に着けて来店してくださることが、本当にうれしいです。励みになります。ありがとうございます!

ポイント

・喜びと感謝を伝えることだけに特化する
・セールス要素は排除する
・個人としての感情を伝える

→お客様の心理に「来店しただけで何かを与えている」「何も購入する気がなくてもここにいていいんだ」という有力感とポジティブネットワークを提供 

商品への関心の度合い

手に持ったか、立ち止まって3秒以上経過したか、同じものを5秒以上見ているか
 →「立ち止まって3秒以上」であれば、その商品に深く興味を持った証拠と言えます。

表情

商品に集中しているか、流し見か、会話に夢中か、商品に気を取られているか、見ていないか
 →販売員は一瞬の表情から多くの情報を得て、複数の仮説を作っています。

服装カテゴリ

服装カテゴリの知識はあればあるほど役に立ちます。どのように役に立つかというと、一個人として「その服装のどこが好きかという意見」を事前にストックすることができる点です。また「服装カテゴリ」によって商品との相性も、ある程度類型化できるため「精度の高い提案」を複数準備することができます。

天然素材
キャリアウーマン
子育て母親コーデ
ブランド特化
ナチュラル系
モード系
ストリートカジュアル
スポーティー
無個性
コスプレ
キャラ特化

配色:メインカラー・ベーシックカラー・アクセントカラー

初見の1秒以内で、お客様が身につけている服装や装飾品、バックの「メイン3色」を特定します。そして「メインカラー」「ベーシックカラー」「アクセントカラー」に3分類します。

メインカラー:30%

ベーシックカラー:65%

アクセントカラー:5%

服装に気を使っている方の多くは、上記の配色割合で街を歩いています。

ご試着いただくアクセサリーの色

ご試着いただくとき、3つの配色の「メインカラー」か「アクセントカラー」と同じ色のアクセサリーをご試着いただくことがポイントです。

なぜなら

・アクセサリーが服装に馴染みやすい
・試着いただいたお客様の満足度が上がる
・ちゃんと見てくれている感、が伝わる

からです。

小物、アクセサリー

小物とアクセサリーから「趣味カテゴリ」を分類します。販売員はここで「趣味カテゴリと親和性の高い自社商品」をリストアップ。ここでも「分類」と「照合」が精度の高い判断を支えます。

シルエット/バランス

お客様の服装の外郭のシルエットを把握。

タイト
スタンダード
オーバーサイズ

一般的に
・対極のシルエットバランスのアクセサリー
・あるいは同タイプのシルエットバランスのアクセサリー

が、合いやすいです。

素材

お客様が身につけているものから好みの素材、嫌いな素材を判断します。

髪型/髪の色/髪留め

女性に取って髪はとても大切です。もしあなたが男性で女性の髪型にあまり関心がないようでしたら、一度、書店に行って女性の「ヘアースタイルブック」をパラパラとめくってみて、その世界に触れてみてください。

日常レベルで女性の髪型への関心を持ち、髪に装飾品を着けることへの習慣に興味を持ちます。

当事者としての体験が「トークに真実味」を提供します。

メイク

「どのように自分自身をメイクをしているか」という姿勢から、「世界に対する自己表現思想」がある程度わかります。販売員は、メイク情報からも表現タイプを類型化し、相性が良い自社商品を頭の中でリストアップします。

荷物

荷物が多い少ない。荷物の種類。お土産の有無。

・ ゴミの有無→持っていたら、「よろしければお捨てしましょうか?」と伺う
・買い物袋の有無とその量

ピアスホールの有無の確認

髪で隠れている方はピアスホールを目視できません。そこで以下のようにアプローチします。

例:特殊なイヤリングを試着いただく場合

販売員:これ、着け心地がとっても面白いイヤリングで…(関心を喚起)         

販売員:お客様、ピアスホールあけてらっしゃいますよね?(あけている前提で質問)

お客様:はい

→販売員:そうですよね。アレルギーの方にも、重ね付けもすることもできるタイプなので、ぜひ、今後の参考に、付けてみてください

→試着(話しながら、「よかったらぜひ」というジェスチャーを加え、試着受け入れ体制がある方かどうかを0.1秒単位で判断し、一瞬でスッと装着する)

お客様:いいえ

 →販売員:あっ、そうなんですね!ぜひぜひ、付け心地がとっても面白いので、付けるだけ付けて(or 全然買っていただかなくて大丈夫ですので)、今後の参考にしてください!すごく面白い付け心地なんです!

→試着(話しながら、「よかったらぜひ」というジェスチャーを加え、試着受け入れ体制がある方かどうかを0.1秒単位で判断し、一瞬でスッと装着する)

「接客・販売体験」の60%を占めるファーストアプローチ

ファーストアプローチの質が「接客・販売体験」の60%を占めます。一番難しく、とても大切な領域です。「店舗理念」と「販売員個人の理念」がダイレクトに表現されます。

ファーストアプローチの特徴

・最も属人的になりやすい(販売員固有のバリエーションに溢れている)

・体調の状態が直接現れる

・接客販売スキルが顕著に露呈される

・販売員個人の哲学が顕著になる

ファーストアプローチの目的

それは

「お客様への最小限の負荷」で「適切量のコミュニケーション」を育てる導入とすること

そのために、以下のことに気をつけます。

・素早く(入店直後が、お客様の関心が最も高い状態)

・適切な大きい声で

・お客様の頭の後ろにアーチ状に言葉を投げかけるイメージで

・知人/友人/赤ちゃんへするような親しみのある笑顔

・はい/いいえ、で答えられる質問(クローズドクエスチョン)

お声がけのタイミングと近づき方。「パーソナルテリトリー」への大胆な接近

「初対面のお客様のパーソナルテリトリー」への参加の了解を非言語から行います。

不安感を除去する態度と、適切な順序で。

お客様への近づき方

・ご近所の方々に挨拶をするときと同じ

・気配を与えてから声をかける(お客様の後ろではなく、横2m位→事前に気配を与える)

・〇手にとって3秒(深呼吸後) ×手に取ったら即

・商品配置を整え、右側から視界に入りながら、1.5~2mの範囲で

・ペアのお客様には、会話の内容をオウム返しする

お客様の今日一日をイメージし、お客様に高い関心を寄せる

「リアル店舗来店の前提条件」を理解します。

すると「非購入者に対する目標設定」が必須であることがわかります。

リアル店舗来店の2つの前提条件

以下の2つの前提条件の中で接客販売が行われます。

・お客様は「出発地と目的地の間の長いプロセスの間の平均30秒ほど」この店舗にいること

・来店の約80%は無目的来店であること

つまり、持ち時間30秒の「無目的来店者80%」と「目的来店者20%」。それぞれに異なるアプローチを瞬間瞬間で行うこと。それがお声がけ第一声の条件です。

ここで大切な要素は

ご来店いただいた方々の未来への想像力

です。

・今、どこから来たのか?→その感想を尋ねる

・これから、どこへ行くのか?

・京都へ来たのはいつ以来か?

・何日間、京都に滞在しているのか?

・昨日はどこへ行ったのか?→その感想を尋ねる

・明日はどこへ行くのか?

無目的来店者の店舗滞在時間は平約10-15秒

無目的来店者に対する目標設定は

滞在時間の最大化

です。

販売員の話し方。何を、どのように話し、どのように話を閉じるのか?

初対面のお客様との適切な会話テーマとは?

初めてお会いしたインスタントなお客様と何を話すのか?

もっと言うと、初めての店に足を踏み入れた「軽度の緊張と警戒心が発生している女性の心理負荷を取り除くお声がけ」とは、一体どういうものか?

キーワードは

・ローコンテクスト

・非パーソナル領域

・未来を現実的に補助する情報

つまり

・ローコンテクスト=一般的に誰にでも通用する文脈

・非パーソナル領域=個人的領域のテーマではなく、パブリックなテーマ

・未来を現実的に補助する情報=単純に誰にでも役に立つリアルな地元情報

です。

具体的には

木戸に立ちかけせし衣食住

季節/道楽/ニュース/旅/知人/家族/健康/裏話or性(異性)/仕事/衣/食/住

を利用します。

上記テーマを常にストックしておき、お客様に合うものを経験と直感で選び、そこに現実的に役に立つ情報を加えて、お渡しする。

例1.

「歩いてあと〇〇分で〇〇(目的地)に着きますが、坂道がきつくなるので、今日みたいに暑い日は、途中の高いお店に入って休み休み進んだ方がいいかもしれないですね」

例2.

「今日も(は)外が暑くて大変ですね~。涼しくしてるので、少し休んでいってください。」

例3.

「あそこにベンチもあるので、ゆっくり休んでくださいね~。全然買っていただかなくて大丈夫ですので。」

など。

店舗の地理、観光客としての経験、お客様の心理傾向、店舗の利用方法などの情報格差を意識し、お一人お一人にカスタマイズした一次情報を提供します。

店舗の哲学を提示する第一声。そして挨拶リスト

第一声の内部配分は、以下の要素で構成されます。

1. 推測:お客様のテンションや性格、状況を推測する

2. 声のトーン:お客様心理に同調させるイメージで、声のトーンを作っていく

3.笑顔

4.好意:相手を好きになる

5.距離感:あたかもいつかどこかで出会った知人・友人という心理的距離感で接する

6.販売員圧力への自覚:お客様にとって販売員の目線は恐怖であることを自覚する

お客様のテンションや性格、状況を推測する

 →お客様心理にフィットしない要素を洗い出し、自分の接客要素からそれを外していく

お客様心理に同調させるイメージで、声のトーンを作っていく

 →自分の感情の中で重心移動を行う

笑顔

 →笑顔が接客の全ての前提になります。では笑顔の意味とは?

笑顔は

世界に対して好意的であることの表明
・来場した方々の「ネガティブな気持ちにフォーカスしない」という意思表示
我々には価値観を見出しているものがあるという最初の姿勢

相手を好きになる

自分の中にある「相手への好意」にフォーカスする。

もう少し正確に言うと
「相手と自社商品の価値観が重なる場所の相手の存在エリア」に深い洞察と関心を注ぐ

あたかもいつかどこかで出会った知人・友人という心理的距離感で接する

 →いつかどこかで合った人、いつかどこかで合う予定の人、として接する

自分の中の距離感はそのまま相手に伝わる

お客様にとって販売員の目線は恐怖であることを自覚する

 →販売員は来店された方の目を正面から長時間直視しない

  →断続的に、パッと見るにとどめる

挨拶リスト

今日も(は)暑くて大変ですね~

こんにちは

やっぱり、外は暑いですか?

着物(浴衣)を、とても綺麗に着てらっしゃいますね!

○○のお帰りですか?

これから○○ですか?

今日も(は)外が暑くて大変ですね~。涼しくしてるので、少し休んでいってください。

今日も(は)外が暑くて大変ですね~。

何も買っていただかなくて全然かまいませんので、ご覧になるだけ見ていってください

一個一個手作りで作っているアクセサリーなので、ご覧になるだけ見ていってください

何も買っていただかなくてかまいませんので、ゆっくり見ていってくださいね

今日も(は)暑くてタオルが離せないですね~

すごいお荷物が沢山で、大変ですね!これから○○ですか?

お客様、すごく綺麗なピアス/ネックレス(装身具や持ち物)を着けてらっしゃいますね。

 →さらに質問:cf.「素材はガラスですか?」「すごくお似合いですね~」

 →立ち止まってくだされば、さらに膨らましていく

 →すみません、実は最初から気になっていて、とてもかわいいので、つい声をかけてしまいました。すみません。全然、商品の話をしなくって。ありがとうございます。ごゆっくりごらんください!

今日のお洋服(お着物/浴衣)とぴったりで、とても素敵です!

あそこにベンチもあるので、ゆっくり休んでくださいね~

販売員の発話要素。基本姿勢、内容、長さ、大きさ、速さ、感情的同調

販売員の発話スタイルは、基本「お客様とイコールになる分量と内容」を意識します。

・基本姿勢:お客様一人ひとりの興味・関心事項に合わせる

・話題の内容:木戸に立ちかけせし衣食住

  →季節/道楽/ニュース/旅/知人/家族/健康/裏話or性(異性)/仕事/衣/食/住

・会話の長さ:表情から会話を終わりたいかどうかを判断する

・声の大きさ:お客様の声の大きさに合わせる

・発話の速さ:お客様の声の速さに合わせる

・感情的同調:お客様の感情に合わせる

  →例)喜び・楽しさ・疲れ・うわの空・ただの付き添い等

話の閉じ方

じつは非常に大切な要素です。ここにも販売員スキルと哲学が現れる。
そして、準備していないと難しいところです。

話の閉じ方挨拶リスト

急にいっぱい話してしまってすみません!

・奥が一番涼しくなってますので、ゆっくり休んでいってください。  

・お連れ様もまだ、いろいろ見てくださっているので、ぜひ一緒に見てあげてください。

・全部、手作りで作っていますので、店内をゆっくり見ていってください。

非購入者・付き添いのお客様

・急にすみません!楽しくて、いっぱい話してしまいました。

一言サイズの会話の後・急いでいる方用・short ver.

・職人さんが一つ一つ丁寧に作ってくれた/○○を使用して作った綺麗な、○○なので、ごゆっくりご覧ください。

長めの会話の後・しっかり関係ができた後・standerd ver. 

・このお店、〇〇(地域名)でも珍しいお店で、20xx年から、〇〇(素材)を使って、〇〇人程の職人さんが、手作りで作った○○(商品カテゴリー)を置いているので、ごゆっくりご覧ください。

+ありがとうございます(会話の最後に)

お客様の返答をそのままの言葉で繰り返すことの重要性

言葉の繰り返し+感謝の感情「話を聞いてくれているという信頼感」

を提供することができます。

例)お客様:「ここの○○、2つ持ってるんです」

  販売員:「そうなんですね!(肯定)ここの○○、2つも持ってくださってるんですね!(反復)ありがとうございます!とてもうれしいです!(感謝の表明)」

   →肯定+反復+感謝の表明

販売員の商品説明プロセス

商品説明はお客様にとっては苦痛を感じやすいところです。

なぜなら

・各お客様が求めている情報を順序よく適切に提示することは難易度が高い
・それができるかどうかは、各販売員に依存する

ためです。

よくある苦痛「ただの機能性の列挙」が発生してしまうのもこの場面です。

ではどのような「商品説明の構造」がよいでしょう?

基本形は「〇〇という機能により、〇〇という苦痛が解消できて、〇〇という未来が手に入る」という未来の体験を提案すること。

商品説明の構造

1. 〇〇という機能により(機能価値)

2. 〇〇という苦痛が解消できて(直接的な課題解決)

3. 〇〇という未来が手に入る(実現したい未来)

機能性は未来を形成するための手段です。

お客様が求めているのは「まだ手に入れていない未来の体験」であることを常に念頭に置きます。

商品説明の段階の一言目。枕詞を使い「説明を聞く負担」を軽減する

具体的な説明段階に入ります。ここでは枕詞のメリットについて。

枕詞を使用するメリット

・お客様の「説明を聞く負担」の軽減
・お客様が本質的に最短で知りたい「QPS」に対する意識があることを提示し、ストレスを軽減する

※QPS:品質、価格、サービス内容(Quality,Price,Service)

例1.面白い/かわいい、というキーワードから始める

・これ、とっても面白くって~/かわいくって(品質)

・これ、とても面白い仕組みになっていて~(品質)

・これは、素材が面白くって~(品質)

例2.価格

・価格帯は2,000円から20,000円までで、いろいろなタイプのデザインがあるのでゆっくり見ていってください~(価格)

 →最初に段階で「価格帯は…」と言うことで、何について説明するのか、全体像を最初に提示。聞く負担を減らす。

例3.サービス内容

・もしサイズが合わなくても無料で交換できますので…(サービス内容)

つまり、お客様が潜在的に抱える恒常的な課題について、端的にわかりやすく答えられる準備をしておくのです。

質問方法。基本はクローズドクエスチョンとヒアリング

クローズドクエスチョンとヒアリング。

お客様情報が少ない状態での特定商品の提示はどちらにとってもいいことがありません。

二択質問

◯二択質問:プレゼントしたい方は、派手な色と落ち着いた色、どちらがすきですか?

×曖昧な質問:プレゼントしたい方はどんな人ですか?

見かけで好みを判断しない

○普段も今日のような〇〇系の服装が多いですか?

→「今の服装以外のタイプも好きなのではないか」という可能性を仮定しておく

×お客様には~がお勧めです

→今の服装だけがお客様の好みのすべてであると判断してしまう

お客様の疑問は「QPS」と「BANTCH」で網羅性、具体性、優先順位を把握する

基本:お客様が一貫して気になっているQPSを念頭に置いて話を展開します。

どのタイミングでもすぐに端的にお伝えできるようにしておきます。

※QPS :Quality(品質)/Price(価格)/Service(サービスorその他)

そして観察です。

・お客様の疑問がQPSのどれか

・あるいはそれ以外の要素なのか

「瞬間的に仮説を立てたあとに声がけをする習慣」で接客します。

QPSとは

・Quality:商品の品質

・Price:価格

・Service:接客、サービス、保証、アフターケア

そして、BANTCHとは

・Budget:予算

・Authority:購入決裁者

・Needs:必須項目、優先順位

・Time:購入予定品のスケジュール

・Competitor:競合(他の好みのブランド)

・Human Resources:予算算出と決裁権の人間関係

です。

これらの項目を、購入決済の重要な要因としてチェックすることで

・購入確率の推測
・非購入者への適切なアプローチ
・購入確率が高いお客様への注力

を区別することができるようになります。

第一声の作り方と具体例

まずは来店者の心に生まれる疑問をリストアップします。

これはどういうことかというと、無理に話を作るのではなく、関心があるお客様の心に生まれる疑問を一つ一つ丁寧に言語化し、自分のキャラクターに合った言い方を作っていく作業です。

来店者の疑問リスト

・これは何?(what)

・これはどんなイヤリング?(feature 特徴)

・これピアスなの?それともイヤリング?(what 何)

・好きなデザインないかな~(where どこ)

・素材はなんだろ~?素材(material)

・何でこの価格?(price)

・コストパフォーマンスは?(耐用年数×使用頻度×価格×満足度)

・アフターサービスは?(service サービス)

その疑問リストに対する端的な答えとなる文章を作ります。

まず、冒頭の1〜2秒に共感と結論の単語がくる最小単位のセリフ構成を作ります。

そして、作った1秒のセリフセットの有効性を日々検証します。少しずつ、有効なセリフがいくつか蓄積されてきます。そうしたら、有効な複数の組み合わせの中で、どの順番でお伝えすると、お客様の優先順位の高い疑問や不安が何かがわかってきます。

商品説明の段階に入ってからの言い回し。お客様には行動を起こす正当性があることを言語化する

とても大切なポイントです。

1.お客様のメリットになる行動を提案する(言語化)

2.そうすることでお客様の行動意欲を正当化する

お客様には行動を起こす正当性があることを言語化するため、心に0.5歩~1.5歩深く入ります。

心に0.5歩~1.5歩深く入るセリフリスト

○定番品なので、オールシーズン使えますね

×お安くなってます

○沢山あって悩みますよね。

×~をお探しですか?

○お持ちしたので、見比べてみてください。

×お持ちしましょうか?

○素敵な色ですよね。いくつか着け比べてみてくださいね。

×他の色もございます/他のサイズもございます。

○私も持っていますが、~なので、~なときに使いやすいです。

×私も持っています。

○他店の在庫を探しますね/それなら、似ているアイテムがありますよ

×店頭に出ているだけです。

○(褒められて)ありがとうございます。お客様に褒められるとうれしいです。

×(褒められて)そんなことないです。

○お客様と同じような、~な方から人気です。

×売れています/人気です。

○お客様のことを「ちらっ」と見る

×お客様のことを「じーっ」と見る

購入しないお客様へ豊かな滞在体験を提供する方法

途中から接客に入る場合のアプローチ。「2人目の販売員」は急激に接客難度が上がる

最初に別の販売員がアプローチした後、何らかの理由で「2人目の販売員」が接客を引き継いだ場合、急激に接客難度が上がります。

なぜなら、お客様からすると、知らない店で知らない販売員が2人も話しかけてきている状況は、どう見ても「望ましい状態」ではなく「心理的ストレスが急上昇した状態」だからです。

失敗確率が高いのも特徴です。

ですので

・1人目の販売員が適切にアプローチし、
・きちんと購入動線を導くこと

が何より重要になってきます。

適切なアプローチリスト

・前回は、いつ来てくださいました?

・もうご存知だとはおもうんですが…

・〇〇は何個くらいお持ちですか?

・これすごく面白いデザインで/かわいいデザインで…

・ずっと気になってたんですけど、お客様のバッグ(服装/小物のいずれか)とってもかわいいですね。

リピーターの来店者へのお声がけ。これまでの店舗体験をイメージ

リピーターの来店者には以下を意識してお声がけします。

・「感謝」を第一に伝えること
・極力邪魔をしないこと
・これまでのお客様の購買履歴をイメージし、それを第一声に反映させること

その方がこれまで店舗で体験されたであろうことをイメージしながら、コミュニケーションを重ねていきます。簡単ではありませんが、うまく伝わると、その方は、より深くお店を支持してくださいます。

リピーターの来店者へのお声がけリスト

・また来てくださってありがとうございます

・こんな坂道まで登ってきてくださって、ありがとうございます

・わざわざ観光地まで来てくださって、ありがとうございます

・〇〇は、おいくつ/何本くらいお持ちですか?

・今、お持ちの〇〇のデザインはまだここにありますか?

・前回はいつごろ来てくださいましたか?

・ありがとうございます。ずっと憶えていてくださったんですね!

・ありがとうございます!着けて来てくださったんですね!とってもうれしいです!

・うちのアクセサリーを身に着けて来店してくださることが、本当にうれしいです。ありがとうございます!

レジでの会話。最も「販売員として生きる一個人の哲学」が出るところ

購入が決定したお客様と会話をする目的は明確な思い出として完成させることです。

レジでの会話の目的

・お客様の「店舗での購買行動」を共通認識として共有

・会話で言語化し、事実として社会化

・明確な思い出として完成させる

・購入前後の1日の予定聞くことで、店舗体験を「外部世界との連続性」の中に記憶化する

・人間個人としての関心を伝え、「経済活動」以外の繋がりも意識していることを暗示する

・購入体験の出口を段階的に準備する

もちろん販売プロセスで必須の

・アフターフォローの説明

・オンライン購入が便利であること

・ショップカードの無料梱包

といった「不安への対応」と「安心の提供」を行った上で。

個人的には、このプロセスに最も「販売員として生きる一個人の哲学」が出る(あるいは出す余地がある)と考えています。なぜなら「人間としての関心」は不要な場合の方が多いからです。

レジでの会話リスト

・とってもお似合いですね!ありがとうございます!

・これからどちらに行かれるんですか?

・今日はどちらにいかれたんですか?

・京都は久しぶりですか?

  →聞き手に回り、よい質問を投げかける

同行している非購入者の店内滞在時間を延ばし、購入者の「購入プロセスの質」を上げる

購入者の滞在時間を伸ばすためには、同行している非購入者の滞在時間を伸ばす必要があります。

なぜ「非購入者の店内滞在時間を延ばすこと」が大切なのでしょうか?

それは以下の関係性があるからです。

・購入者は「同行する非購入者の時間提供限界」に敏感

非購入は、自分がこの店舗で購入すべきモノがないと自覚したとたん「無意識的判断」に身を預ける

・購入者は「同行する非購入者の時間提供限界」に敏感

・非購入は、自分がこの店舗で購入すべきモノがないと自覚したとたん「無意識的判断」に身を預ける

・「無意識的判断」は、ある程度「類型化可能」な反射行為である

ということは、販売員が「非購入者」の「無意識的判断」に良い影響を提示することができれば、間接的に「購入者」の「購入プロセスの質」を上げる可能性を獲得することができるのです。

対非購入者/低関心者の心理的条件

非購入者/低関心者は「ここにいてはいけない」「用がない人はこの場所から出なくては行けないのではないか」と感じている可能性が高い。

よって、販売者は非購入者/低関心者へ「会話」を提供します。

「購入意図はなくてもいい」「ここにいてもいいんだ」という安心感を提供するために。

①非購入者/低関心者の居心地の悪さを解消する

②潜在購入者の心理を安定に導く→空間滞在に居心地のよさを感じていただく

購入者の購入心理プロセス

購入者の購入心理は以下のように変化していきます。

無関心→関心→試着→購入の可能性考慮→熟慮→購入

そして最も大切で難しいところは

購入者

 →できるだけ早く、できるだけ負荷をかけないで、3の試着までもっていくこと

非購入者

 →購入されない方々(入店者の8割以上)を「購入行為がいらない関心」までもっていくこと

です。

非購入者に何を提供するのか?

それは「この店舗独自のストーリー」「専門的で興味深い知識」「無料試着という体験」です。

・○○の成り立ちと特徴

・ ○○の作製工程

・ ○○の色と光の関係

・サンプルを触って、試着して、体験する

  →知っていただく、体験していただく、知る楽しさ、の提供

  →購入しなくてもいいし、見て、触って、体験していい。という感覚

接客販売スキルと経験が顕著に現れる「動待機」とは?

販売員は、入店前のお客様から一瞬で判断されています。そこで大切な姿勢が動待機です。

動待機とは、文字通り「作業をしながら待つ」ことです。

・店内にいる我々の動作は、いつでも、すべて、歩行者から観察され、入店するかどうかの判断材料になっている

・コミュニケーションの伝達手段で説明した「1.非言語(服装・身なり・香り・表情・姿勢・動き)55%」に直結するアクション

動待機の感覚

・人に見られている感覚

・兄弟の結婚式の受付をしている感覚

動待機の思考方法

・自分がお客様だったらどんな動きをしている販売員の店に入ろうとするか?

動待機の具体的な動き

・忙しそうに軽作業(いつでも第一声のアクションができるように) 

・忙しそうに、機敏に、作業している様子を演じ、いつでも「入店する隙」を作る

・店内に散らばる

・姿勢・動き・表情に気を配る

動待機の反対の行動

・棒立ちで入り口を眺めること

・同じ場所に密集すること

店内のスタッフ同士の会話には細心の注意が必要

店内のスタッフ間の会話の内容や、その見え方、態度はダイレクトに店内にいる人に伝わります。非常に注意が必要です。

店内は、お客様が感動し、商品を楽しむための場所。

お客様のそばでスタッフ間の会話が起こると、お客様は「何か自分のことについてはなしているのだろうか?」と不安を与えてしまう。

  →必要事項以外の私語はしない方がマイナス要素を削減できます。

販売員のモチベーション管理

仕事全般のモチベーションの質を向上させるために

初めて仕事として接客販売をした3ヶ月は、大変でした。

「初めて出会う女性に数分で数千円〜数万円のアクセサリーを買っていただくこと」は不可能に思えました。ポケットに収まる小さなメモ帳に接客内容を記載し、帰宅後、成果と改善点をまとめ、休日には書店で販売接客の本を読み漁る日々。

トレーニング項目を設けることで、漠然とした販売接客の全体像に分析と改善と再現性を発見していきました。

トレーニング項目

1.商品知識

2.接客技術

3.業務知識

4.来店中のお客様の情報共有

5.お客様を楽しませる/喜ばせるためのテンションキープの方法

6.ミーティングの効果の共有と、実践

メンタルキープのために

結局、今の辛い現実の先に自分の理想を仮定するからこそ、分析と改善に価値を見出すことができます。つまり「理想の状態のイメージ」が前提条件として無い「分析と改善」には、現実を変化させる力は宿らない。

そのためには、自分のコンディションを整えることが大切です。

なぜなら「接客販売をして働くこと」は、したことがない方が想像するよりもさらに過酷で残酷だからです。

・良い睡眠

・あきらめない心

・自分を赦す

・朝、出勤前に、今日一日の最高の流れをイメージする

・常に最善のイメージを映像化

・それを行う前に、自分はできると信じて行動する

・自分に前向きな言葉をかける

セルフトーク:自分との対話

これらは、ノートに書き、休憩の前後、バックヤードで繰り返していた言葉です。

他人を変えることはできない。でも、自分を変えることはできる

目の前の「達成不可能の仮面」をかぶった出来事を、いかに達成可能と感じられるようにするか。

乗り越えるのは、昨日の自分

昨日の自分より、3mmだけ進む

・3mm×365日=1m9.5cm

・109.5×2年=2m19cm

・109.5×3年=3m28.5cm

・109.5×10年=10m95cm

・109.5×20年=21m90cm

いかに周囲の人々を褒め、軽い気持ちにすることができるか。

お客様から「ありがとうございました」と言っていただける接客

アクセサリーショップの店長としての心構え

先頭接客(指揮官先頭)

・店長は、困難な状況の困難なお客様にフォーカスする

・常に最善の1日の終わりのイメージを持ち続け、実際に達成した状況を想像し続けること

・毎日変わるメンバーの組み合わせでできる最善のチームプレーを想像する

・最善をつくし、自分を赦し、他の販売員も赦すこと

・閉店のシャッターを閉じる瞬間まで、状況に対して、諦める姿勢を選択しないこと

・困ったことがあったら「大丈夫」と心の中で自分自身に声がけすること

・ネガティブなセリフ/言葉遣いは行わないこと

・お客様と、社長と、上司と、同僚と、家族と、自分自身に感謝すること

・そして「上記の価値体系を運営する者」とし、日々て自分自身を構築していくこと

常に笑顔でいる根拠を見つける方法

商品を買っていただく現場で常に笑顔でいるためには、必要なことがあります。

それは、

・商品が「ある一定の方々には必ず喜んでいただけるものであること」を感情的にも論理的にも知っていること

・「未来」をよりよく変化させることができる力が商品であることを確信していること

これが土台にあるからこそ「常に笑顔」でいる根拠を見つけることができます。

お久しぶりの精神

初めて会うお客様に対して「もしかして別のタイミングとシチュエーションで会っていたら、すでに仲の良い友人になっていたはず」という距離感を初めからキープしながら話かけること。

当たり前の事に感謝

どんなことに対しても、感謝することを瞬間瞬間に見つけること。狙いは、「望ましくないことの数」を「感謝の数」が上回ることで、自分自身の世界を肯定する習慣を持つこと。

掃除・バックヤード・レジ

掃除することも、根本的には自分の内的環境維持と繋がってきます。

接客トークの共有

特に後進の同僚には「関係性を築くために有効な接客トーク」を共有します。それは最も効果的なチークプレーの向上につながります。

価格への意識

自分が高いと感じる価格と、お客様が感じる価格の高さを決して同一視しないこと。

これを混同してしまうと、一気に売れなくなります。

自分が高いと思っている商品を他者へ販売することは、極めて難しい。

日々と毎時の売上への意識

例年の売上データから、その月との月の「平日と土日祝日」の売上平均金額を知ることができます。

そしてその数値の120%を売上目標と設定し、どうやったらそれが達成できるか?を戦略から考えます。

モチベーションキープ

さまざまな方法を駆使し、自分自身のモチベーションを高く維持します。なぜならモチベーション状態が売上に直結すると言い切ってしまって、ほとんど問題ないからです。

スキルの相互交換

自分と同じ属性の同僚の接客を観察し、取り入れられるところは率先して自分の販売プロセスに導入します。また、有効でないスキルも、日々修正/削除していきます。

繁忙期の動きへの切り替え

繁忙期は「短期間で効率的にたくさんのお役様にアプローチする」必要が出てきます。非繁忙期の約2倍以上の体感速度で「アプローチ→クロージング」までをチームで繰り広げる。そのため、接客の動きを短期集中形に変えます。

WEBサイトとリアル店舗への応用へ向けて

2021年10月時点で、WEBサイトとリアル店舗の役割は、2016年よりも明確に線引きできるようになってきたと感じます。

現在のリアル店舗の接客では、より「ブランディングとマーケティングを融合」した倫理的な人物像と行動が求められます。そして、現在のWEBサイトの接客は、より「ブランディングとマーケティングを体現」した長期的な関係性構築の拠点として、重要性を増しています。

引き続き、2013年から2016年にかけて体験した販売員としての経験を、丁寧にときほぐし、これからの「リアル店舗」と「WEBサイト」の改善につなげていこうと思います。