接客販売マニュアル5. 商品を説明するプロセス

商品説明はお客様にとっては苦痛を感じやすいところです。

なぜなら

  • 各お客様が求めている情報を順序よく適切に提示することは難易度が高い
  • それができるかどうかは、各販売員に依存する

ためです。

よくある苦痛「ただの機能性の列挙」が発生してしまうのもこの場面です。

ではどのような「商品説明の構造」がよいでしょう?

基本形は「〇〇という機能により、〇〇という苦痛が解消できて、〇〇という未来が手に入る」という未来の体験を提案すること。

商品説明の構造

  1. 〇〇という機能により(機能価値)
  2. 〇〇という苦痛が解消できて(直接的な課題解決)
  3. 〇〇という未来が手に入る(実現したい未来)

機能性は未来を形成するための手段です。

お客様が求めているのは「まだ手に入れていない未来の体験」であることを常に念頭に置きます。

商品説明の段階の一言目。枕詞を使い「説明を聞く負担」を軽減する

具体的な説明段階に入ります。ここでは枕詞のメリットについて。

枕詞を使用するメリット

  • お客様の「説明を聞く負担」の軽減
  • お客様が本質的に最短で知りたい「QPS」に対する意識があることを提示し、ストレスを軽減する

※QPS:品質、価格、サービス内容(Quality,Price,Service)

例1.面白い/かわいい、というキーワードから始める

  • これ、とっても面白くって~/かわいくって(品質)
  • これ、とても面白い仕組みになっていて~(品質)
  • これは、素材が面白くって~(品質)

例2.価格

  • 価格帯は2,000円から20,000円までで、いろいろなタイプのデザインがあるのでゆっくり見ていってください~(価格)
    • 最初に段階で「価格帯は…」と言うことで、何について説明するのか、全体像を最初に提示。聞く負担を減らす。

例3.サービス内容

  • もしサイズが合わなくても無料で交換できますので…(サービス内容)

つまり、お客様が潜在的に抱える恒常的な課題について、端的にわかりやすく答えられる準備をしておくのです。

質問方法。基本はクローズドクエスチョンとヒアリング

クローズドクエスチョンとヒアリング。

お客様情報が少ない状態での特定商品の提示はどちらにとってもいいことがありません。

二択質問

  • ◯二択質問:プレゼントしたい方は、派手な色と落ち着いた色、どちらがすきですか?
  • ×曖昧な質問:プレゼントしたい方はどんな人ですか?

見かけで好みを判断しない

  • ○普段も今日のような〇〇系の服装が多いですか?
    • 「今の服装以外のタイプも好きなのではないか」という可能性を仮定しておく
  • ×お客様には~がお勧めです
    • 今の服装だけがお客様の好みのすべてであると判断してしまう

お客様の疑問は「QPS」と「BANTCH」で網羅性、具体性、優先順位を把握する

基本:お客様が一貫して気になっているQPSを念頭に置いて話を展開します。

どのタイミングでもすぐに端的にお伝えできるようにしておきます。

※QPS :Quality(品質)/Price(価格)/Service(サービスorその他)

そして観察です。

・お客様の疑問がQPSのどれか

・あるいはそれ以外の要素なのか

「瞬間的に仮説を立てたあとに声がけをする習慣」で接客します。

QPSとは

  • Quality:商品の品質
  • Price:価格
  • Service:接客、サービス、保証、アフターケア

そして、BANTCHとは

  • Budget:予算
  • Authority:購入決裁者
  • Needs:必須項目、優先順位
  • Time:購入予定品のスケジュール
  • Competitor:競合(他の好みのブランド)
  • Human Resources:予算算出と決裁権の人間関係

です。

これらの項目を、購入決済の重要な要因としてチェックすることで

  • 購入確率の推測
  • 非購入者への適切なアプローチ
  • 購入確率が高いお客様への注力

を区別することができるようになります。

第一声の作り方と具体例

まずは来店者の心に生まれる疑問をリストアップします。

これはどういうことかというと、無理に話を作るのではなく、関心があるお客様の心に生まれる疑問を一つ一つ丁寧に言語化し、自分のキャラクターに合った言い方を作っていく作業です。

来店者の疑問リスト

  • これは何?(what)
  • これはどんなイヤリング?(feature 特徴)
  • これピアスなの?それともイヤリング?(what 何)
  • 好きなデザインないかな~(where どこ)
  • 素材はなんだろ~?素材(material)
  • 何でこの価格?(price)
  • コストパフォーマンスは?(耐用年数×使用頻度×価格×満足度)
  • アフターサービスは?(service サービス)

その疑問リストに対する端的な答えとなる文章を作ります。

まず、冒頭の1〜2秒に共感と結論の単語がくる最小単位のセリフ構成を作ります。

そして、作った1秒のセリフセットの有効性を日々検証します。少しずつ、有効なセリフがいくつか蓄積されてきます。そうしたら、有効な複数の組み合わせの中で、どの順番でお伝えすると、お客様の優先順位の高い疑問や不安が何かがわかってきます。

商品説明の段階に入ってからの言い回し。お客様には行動を起こす正当性があることを言語化する

とても大切なポイントです。

  1. お客様のメリットになる行動を提案する(言語化)
  2. そうすることでお客様の行動意欲を正当化する

お客様には行動を起こす正当性があることを言語化するため、心に0.5歩~1.5歩深く入ります。

心に0.5歩~1.5歩深く入るセリフリスト

  • ○定番品なので、オールシーズン使えますね
    • ×お安くなってます
  • ○沢山あって悩みますよね。
    • ×~をお探しですか?
  • ○お持ちしたので、見比べてみてください。
    • ×お持ちしましょうか?
  • ○素敵な色ですよね。いくつか着け比べてみてくださいね。
    • ×他の色もございます/他のサイズもございます。
  • ○私も持っていますが、~なので、~なときに使いやすいです。
    • ×私も持っています。
  • ○他店の在庫を探しますね/それなら、似ているアイテムがありますよ
    • ×店頭に出ているだけです。
  • ○(褒められて)ありがとうございます。お客様に褒められるとうれしいです。
    • ×(褒められて)そんなことないです。
  • ○お客様と同じような、~な方から人気です。
    • ×売れています/人気です。
  • ○お客様のことを「ちらっ」と見る
    • ×お客様のことを「じーっ」と見る