課題教育型リアル店舗の特徴と課題
課題教育型リアル店舗の特徴を一言でいうと、以下の2つです。
- 冒頭の1-2分で信頼関係を構築できなければ、その後、話は聞いていただけない
- つまり「冒頭の1-2分で、人として信頼していただくこと」が最初にして最大の課題
そのためには、以下を準備しておく必要があります。
- 事前に、世界に対する個人として自分との対話を行い「どのような倫理観・価値観を備えているか」の言語化
信頼関係は自分との対話から始まる
世界に対する個人として、どのような倫理観と価値観を備えているか、自分との対話を行います。
それを会話構成の土台とします。その上に成り立つ会話であれば、徐々に信頼関係の構築に成功する確率が上がるためです。これらが土台にあることが、信頼関係構築と、予期せぬ事態への対応力を生みます。
逆に言うと、自分の価値観の外にあるセリフや言動を表現すると、お客様は、驚くほど正確にその乖離を感じ取り、あなたから距離を取り始めます。
お客様と会話する前に行う、自分との5つの対話
具体的には、以下の5つの項目について。会話はそのあとです。
- 社会性:会社/自分の実績・成り立ち・特徴・資格・キャリア・お客様の声
- 愛情・深い関心:まず、自分から自分を好きになる。自分を思いやる
- 自己開示:自分の失敗・トラウマを赤裸々に伝え、自分に共感を提供する
- 価値観:自分の好き嫌いを明確に表現する
- 理想世界:お客様を連れて行きたい理想の未来を言語化・映像化する
販売員の目的(KGI)と目標(KPI)
販売員の目的(KGI)
販売員の目的(KGI)は以下の4つです。
- 組織が実現しようとしている価値観を、お客様へ紹介すること
- その世界への参加をお客様へ促すこと
- 共有と育成に値する世界観を整え、然るべき提示のタイミングを身につけること
- リピーター、継続購入、ファン、価値観の支持者と長期的関係性を構築すること
販売員の目標(KPI)
販売員の目標(KPI)は複数設定できます。
- 存在の認知:商品名、店舗名を知っていただく
- 課題の認知:課題を認知していただく、教育素材を提供する
- 感動体験:体験して、感動していただく
- 体験記憶:体験を覚えていただく
- 世界観への参加:世界観への参加を楽しんでいただく
- 価値観の共有:世界観を快く思っていただく
- 滞在時間の最大化:できるだけ長い時間を過ごしていただく
- 有形物の無償提供:ショップカードを受け取っていただく
- 想起行動:帰宅途中、スマホで検索していただく
- 想起行動:帰宅後、ネットで検索していただく
- 第一想起:アクセサリー購入時の選択肢として第一想起していただく
- 購入:購入していただく
- リピート:再度、店舗に来ていただく
- リピート:再度、オンラインショップに訪問していただく
お客様へ行う4つのアクション
そのための手段として、私達販売員は以下の4つのアクションを店舗に足を運んでくださった方々に実行します。
- 「感動の体験」を提供する
- 「まだ知らない課題」をお伝えする
- 「課題解決策」をお伝えする
- それによって「より望ましい未来」がその先にあることを提示する
また原則として、購入の有無に関わらず、入店してくださった方々には「体験」「感動」「喜び」「感情的共感」「知的好奇心」を提供します。
接客販売の4つのプロセス
課題解決型商材のリアル店舗における「接客販売プロセス」は4つの段階に分けることができます。
- ファーストアプローチ
- セカンドアプローチ
- 商品説明
- クロージング(1~3が良ければ、何もしなくてよい。購入行為の決定権は我々にはない)
以下、これらの詳細を説明します。
ファーストアプローチ
ファーストアプローチは、最も大切な局面です。お客様の潜在意識「デフォルトのネガティブ認知(買わされるのでは?)」を顕在化したあとに、裏返します。
- 「不安感」「恐怖感」「ストレス」を一掃する
- でもどうやって?
- その具体的方法は「販売員のボディランゲージ概論」で詳しく説明します。
- 安心していただく
- 「安心感」を提供する。つまり「買わせようとする者ではないです」と伝える
- その後に提供する「安心感」「信頼感」のための道筋を整える
- この段階では、あらゆる局面で「売ろうとしない積極性」を維持する
- そのための「即興的表現力」を身につける(舞台の上の俳優のように)
セカンドアプローチ
「ファーストアプローチと同じ効果を生む違う手法」を継続ことで、共有時間を長く保ちます。
セカンドアプローチの目的は「2者間だけの関係性を蓄積する」こと。そのためには「魅力的なささやかな出来事」を経験するための時間を確保する」必要があります。
お客様の購入プロセスの途中で販売員がバトンタッチすると「購入確率」が激減する理由もここにあります。お客様は「出会った最初の印象を継承しながら」購入プロセスを歩いていきます。
セカンドアプローチの目標(KPI)リスト
- さらに安心していただく
- 第二声目で「さらに深い安心感/信頼感の提供」の基礎を作る
- お客様の心の動きに寄り添う
- 積極的受動態:「購入行為の決定権」は我々にはない
「積極的受動態」とは私が作った言葉です。それは、「購入行為の決定権」は販売員には全くないという思想をもとに、お客様の興味の度合いに合わせて、限られた時間を楽しんでいただくためにあらゆるコミュニケーションを測る、という態度です。
商品説明
「ファーストアプローチ」と「セカンドアプローチ」を経験していない商品説明はとても危険です。商品説明をし始めたとたんに、お客様の気持ちが冷める、という現象が生まれるためです。
販売経験のない方が最初に感じる「販売の難しさ」も、ここで発生します。
「ファーストアプローチ」と「セカンドアプローチ」を経験した2人(販売員とお客様)は、心地よい関係性を維持したまま、以下のステージに進みます。そこで販売員は「販売行為と購入行為」の核心に近づいて行きます。
商品説明の目標(KPI)リスト
- 「事実と効果」のセットフレーズ
- 2歩先の動きと台詞
- その後「お客様の不満・不安・欲求を解消するもの」として商品紹介
- 購入の有無に関わらず、リピーターになっていただく関係作り
クロージング
「ファーストアプローチ」「セカンドアプローチ」「商品説明」のプロセスを経たあとの、販売員のアクションリストは?
それは、以下の2つ。
- 沢山のしてはいけないことリストをもとに、それを行わない
- 数少ない一貫した姿勢をもとに、一貫した姿勢を継続する
販売プロセスの全体像をまだ体感していない販売員は、この段階のお客様に対して「適切ではない言葉と態度」を表現します。反対に、販売プロセスの全体像を理解している販売員は「細心の注意を払った思慮深い態度」を表現します。
クロージングの目標(KPI)リスト
- 一歩引いて、お客様の内部で発生している購入決定プロセスを見守る
- 「購入行為の決定権は我々にはない」ことを肝に銘じる
- 「販売員が言いたいこと」を言わない
- 「お客様の内部の購入障壁」を仮説立てする
- お客様の心の動きに寄り添う
- 多くの「してはいけないこと」を知り、リスト化し、それをしない