書籍の基本情報
書籍タイトル:魔法の世紀
著者:落合陽一
出版社:PLANETS
まえがき p6-18
映像の世紀としての20世紀
・リュミエール兄弟-シネマトグラフ-映像の世紀-20世紀
・人類社会は、映像を通して以下の関係性を考えてきた
時間と空間
コミュニケーション
イメージの伝達方法
コンピューターのインターフェース
虚構と現実
魔法の世紀としての21世紀
・発端はコンピューター
・当初:弾道計算装置-メディア装置へ
・n対nの双方向的インタラクティブなネットワーク構造へ
・社会学者マックス・ウェーバー:脱魔術化-社会に科学が浸透していく過程-
・社会批評家モリス・バーマン:世界の最魔術化-reenchantment of the world-
内部の仕組み理解しなくても、コンピューターは簡単に使えてしまう
・アーサー・C・クラーク:充分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない
・落合陽一:人間を語る軸はどこにあるのか?
技術と芸術の両方(ラテン語のars)を表現/内包するメタ視点が必要
かつ、技術とも芸術とも異質→魔法という概念
21世紀
・あらゆる虚構・リアル/バーチャルの対比を乗り越え、魔法使いになる世紀
・知的好奇心がサスティナブルな希望を実現する
・コンピューターが自然と人工物を取りなし、新たな自然観を開いていく
・人間はより人間らしく、幸福に生きていく
第1章 魔法をひもとくコンピューターヒストリー p19-57
魔法の最大の特徴:無意識性
パロアルト研究所
・アメリカの複写機大手のゼロックスが1970年に設立した研究所
マーク・ワイザー博士
・論文:21世紀のコンピューター(the computer for the 21st century)
自分たちの目的は「コンピューターを人間の環境と一致させ、コンピューターに対する意識をなくすこと」
・カーム・テクノロジーという概念
・ユビキタス・コンピューティングという概念
いつでもどこでも相互に接続されたコンピューターが人間をサポートすることで、人間はコンピューターを意識しなくなる、というビジョン
・空気のような植物のような、アンビエントなコンピューターを実現すること
・非メディアコンシャスな情報環境
人類生活とコンピューターの関わり
1.1973年 Altoの発明
2.1984年 Machintoshの発売
象徴的機械からいかに脱却するか
・スマートフォンを使って何をするかを考えてもしょうがない
・コンピューターの本質とはいかなるものかを考え、私たちの生活や体験が、それによってどう変革されるかを思考すること
バネーバー・ブッシュ:Vannernar bush 1890-1974
・1930年代に情報検索システム「Memex」を提唱
・ハイパーテキストの構想に影響を与えた
・MIT教授の教え子に、クロード・シャノンがいる
世界一有名な情報学者クロード・シャノン
・コンピューターの数学的記述法を作った
・通信/暗号の基礎を作った
・現代の情報の概念を作り上げた
・研究分野:標本化定理/暗号理論/情報理論/デジタル回路
・修士論文:継電器及び開閉回路の記号的解析
電気回路のスイッチングを、プール代数の論理式に対応づけ、現代のデジタル回路「デジタル論理回路」の基礎を築く
ダグラス・エンゲルバート:Douglas Carl Engelbart 1925-2013
・情報検索システム「Memex」に影響を受け、初期コンピューター開発に携わる
・マウス発明者として有名
アイバン・サザランド:1938-
・人間とコンピュータが関わる対話的基礎を築いた
・人間の価値観をアップデートしうる技術が、コンピューターによって可能になることを示した最初の人
・人間的な領域「創造性」「リアリティ」を、コンピューターの補助によって、現実に解ける問題として捉えた人
・1963年:マサチューセッツ工科大学(MIT)にて、博士課程指導教官クロード・シャノンの元で、博士号を取得
・1963年:コンピューターグラフィックス分野の開拓
「Sketchpad」の実装(直接タブレットでできるドローイングソフト)で博士号を受賞
・1965年:著書 the Ultimate Display
バーチャルリアリティを、現実と見分けがつかない何かを作ること、と構想
現実自体を物理的にハックし、現実を上書きしていくもの
・1968年:バーチャルリアリティ分野の開拓:「The Sword of Damocles(HMD:Head Mounted Display)」
・1968年:ユタ大学でコンピューターグラフィクスを研究。多くの博士号取得学生・共同研究者を育てる
・1975年以降:研究テーマが「分散システム」に移行
サザランドの共同研究者①ボブ・スプロウル
・サザランドとともにコンサルティングファームを企業
・サン・マイクロシステムズに買収され、後のサン・マイクロシステムズ研究所の母体となる
ここから生まれたプログラミング言語・ユーザビリティ研究が、1970年代のUNIXブーム・その後のインターネットユーザビリティ立役者となる
サザランドの弟子①アラン・ケイ:パソコンの父
・Dynabook構想を作りだした人(現在のノートパソコンとタブレット端末の原形)
・1973年のアラン・ケイこそ、コンピューターを広い意味での「メディア装置」として捉えた最初の人
・ユタ大学でサザランドの影響を受けた後、パロアルト研究所の研究員時代に、以下の2つを開発
1.最初のオブジェクト指向言語「smalltalk」
2.現代型のGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)コンピューター「Alto」の生みの親
Dynabook構想
1972年の著書:Personal computer for children of all ages
・安価で低電力する持ち運び可能なコンピューター
・マルチメディアが扱える(音声・画)
・ディスプレイと直感的なユーザーインターフェースをもち、子供が紙とペンの代わりに使える
・コンピューターのOS自体が簡単なプログラムで動いていて、エンドユーザーが簡単にプログラミングできる
サザランドの弟子②ジェームズ・クラーク:Netscapeの創始者
・大学でのコンピューター研究
・後に、シリコングラフィクスを起業
・その後、ネットスケープコミュニケーションズを立ち上げ
シリコングラフィクスのワークステーション上で、第一次バーチャルリアリティブーム・黎明期のハリウッドのコンピューターグラフィクスソフトウェアのほとんどを作る
・1989-1990年
スイスの素粒子物理学研究所CERN(欧州原子核研究機構)にて、WWWW(World Wide Web)プロジェクトを開始
・1994年
モザイクコミュニケーションズを創業
ネットブラウザNetscapeを開発
wwwへ簡単にアクセスできるサービスを提供
高性能のコンピューターをリリース
レンダリングソフトをリリース
サザランドの弟子③ジョン・ワーノック:Adobe創業者
・学生時代にサザランドのもとで、CG分野を研究「隠面処理のアルゴリズム」
・ディスプレイ内の視覚イメージの操作可能性を飛躍的に向上させた
・ページ記述言語PostScriptの発明者
・Adobe創業者:CAD,illustrator,Photoshopなどを開発
サザランドの弟子④エド・キャットルム:Pixar創業者
・コンピューターグラフィクスを使ったコンテンツクリエイションで最先端を行く人
・ルーカスフィルムでコンピューターグラフィクスチームを立ち上げ、そのチームごと独立し、Pixerを創業
・サザランドのもとで、モデリングを研究スプライン曲線の生成手法を手がけ「Catmull-Clark曲面」に名を残す
・3DCGにおける基本的手法
ジュラシックパーク
ターミネネーター
・レンダリングソフトを使い「レンダーマン」というソフトウェアと専門職が生まれる
サザランドの4人の弟子
・サザランドの魔法の思想と、20世紀の映像の世紀にアジャストすることを、サザランドの4人の弟子が取り持った
・「非メディアコンシャス環境」の誕生可能性の準備を整えた
世界中にコンピューターを普及させコンピューター文化を作った
→アラン・ケイ、ジェームス・クラーク
イメージを作り出す礎
→エド・キャットルム、ジョン・ワーノック
21世紀の実世界志向インターフェース
・人間の能力・体感・情報それ自体の表現をいかに行うか
・特権的な装置は不必要
・情報ハードウェアとしてのディスプレイを、その都度動的に形成しうる環境の研究
・象徴的機械が不在の時代の、情報とハードウェアの関わり方
・「物理空間で情報空間を表現する能力」が増大する過程
IOTで重要なこと
・情報機器内部の仮想空間にとどまらず、物理空間へ波及的に広まること
・最終的には、物理世界の一つ一つが仮想空間の一つ一つと対応していく
→全ての情報空間が、物理空間で表出し、新たな自然を作り出していく
意識のフォーカスの変化
・象徴的機械から、環境全体へ発散し、物理空間は環境インターフェースとして機能し始める
カームテクノロジーと呼んだ世界
・情報から物性をコントロールできる部屋
・究極のディスプレイ
・物理的に干渉し、人間には認識されない情報環境
第2章 心を動かす計算機 p59-93
メディアアーティスト
・石井裕:タンジブルヒット
・矢谷和彦:
・クワクボリョウタ:
2008年:iphoneの登場
人間はコンピユーターの下位存在になるのでは
コンピューター総体が、一つの意思や特殊なエントロピー的性質を持っている
2009年:メディアアート活動。文脈的活動として
・人間の認識の解像度について錯視を用いて迫った
・現実性の再定義:
人間の目の分解能と、空間の本質的な解像度の対応は、ディスプレイの細かさで判断するのは難しい
なぜなら、例えば、星の光は光子が眼球に飛び込むことによる対応反応で考えた方がわかりやすい(解像度というよりは)
解像度という言葉を拡張し、現実世界を「無限に解像度が高いディスプレイ」である
無限に解像度が高い錯覚の信号からイメージを生成できれば、それは現実と変わらないのではないか
メディア装置の研究へ
・メディア装置の制作による表現と、メディア装置の研究は似ている、という実感
メディアアートの歴史
評価基準:美術史の中心にあった西洋芸術史における「文脈の構築」
→文脈のゲームとしての芸術
コンテンポラリーアートを牽引するもの
鑑賞可能性::資本主義市場の中心であるニューヨークのギャラリーへ足を運ぶ「鑑賞可能性」
制度としてのアートの権威の源泉:限られた場所に存在するギャラリーへ人々が鑑賞しにやってくる構造
それを、マスメディアを中心に共有される文脈に依存し、世界規模で、操作の差異を競う「文脈のゲーム」が生まれた
21世紀のインターネット
表現可能性とキュレーションが民主化され、共通の文脈を展開するのが難しくなった
皮肉にも「コンピューターカルチャー」そのものが、唯一の大きな文脈となった
原理のゲームとしての芸術へ
・文脈のゲーム:20世紀の延長上でメディアと人間の関係性について問う
・原理のゲーム:より原初的な感覚を対象とした芸術。どれだけ感覚に訴えられるか
かつての美術
・カンバスというメディア上で、色と形を操作する芸術
ピカソにより伝統的手法はやり尽くされ、カンディンスキーの視覚体験の再構築によってやり尽くされた
映像の世紀の特徴
・表現とメディアを分離させたこと
・メディアそのものには、感動の核になる要素は入っていない
メディアアートの定義
・映像の世紀を超えたメディアの発明
・新しい文脈を生み出すために、技術と表現の両方を作る必要がある
メディアアートとしてのキャメロン作品
aaa
メディアアートとしてのディズニー作品
・6つのラボラトリー:コンピューターサイエンス・イメージング
・レンダリングエンジンの開発
・カリフォルニア工科大学、スタンフォード大学、スイスのチューリヒ大学
ディズニーの究極目標:この世界に魔法の王国を実現すること
・映像(生産技術とコンテンツ)を掌握し、物象的世界を支配する(リアルに実装する)ところまで手がけるコングロマリットになろうとしている
・現時点で、実現可能なテクノロジーをそのまま箱に詰め込んで、多くの観客に、原体験的な感動を与えている
・ヨーロッパのブランド企業のような長期的ビジョンがある(GoogleやAppleよりも長いスパンの思想)
第3章 イシュードリブンの時代 p97-121
プラットフォームの台頭
・プラットフォームの定義:①インフラ機能を集約し、②共有し、③活動コストを下げる(基盤内部で)
・プラットフォーマー:世界で最も勢いのある企業たち
・私たちの生活に必要なあらゆるものを「汎用化」し、「共有」させ、価値を提供している
・同時に、汎化共有化の圧力を世界に与えている
プラットフォームの思想の源流
・プラットフォームの思想=都市の機能
・高度化する郊外のショッピングモール
・現代都市でもインフラの集約化が起こっている
・街全体が巨大なショッピングモールとして振る舞っている
・あらゆるコンテンツを飲み込む性質を持っている
・そこでは「全体非批評性」が失われている
Googleなどのプラットフォームが都市のように振る舞っている
・人々の動線を制御し、コンテンツへとデリバリーし、あらゆるコンテンツを吸収し、情報と情報を紐付け、整理し、力を得ている
・基盤を共通化し、コストの最小化を実現し、ユーザー活動に「無限の多様性」を保証した
メディアに吸収されたコンテンツ
・プラットフォームの下位存在となる
・プラットフォームから出た瞬間に、なかったものとされる
・私たちは「全体批評性」を失ってしまった
・プラットフォームが複数化し、コミュニティが飽和し、文脈は飽和し、メディアアートは「同業者同士の議論の場」でしかなくなった
文化とは果たしてそういうものか?AppleとGoogleの思想
・Appleの思想:パソコンの思想(人間の身体特徴・知的能力・表現の自由をいかに拡張するか)
・Googleの思想:人工知能の思想+プラットフォームの思想
芸術家/起業家は、どうやって人類の価値/芸術の定義を刷新できるか?
人類の価値/芸術の定義を刷新する5つの手順
1.サザランドの思想の系譜の知識を得る(デジタルカルチャーの大元に戻る)
人間の知性を、コンピューターで、いかに拡張するか?
2.原理としてのテクノロジーの知識を身につける
3.テクノロジーの現在的な意味づけを行う
プラットフォーマーの思想と常にぶちあたり、乗り越える
4.深層と表層を同時に設計し、常にそのプロセスを刷新し続ける
5.新しいテクノロジーの発明をひたすらに連続させ、人間の精神に原理主義的なショックを与える
アートを再定義する:アートとは、人間精神のあり方を、外在的に規定していく営み
・各時代の優勢なプラットフォームの特徴によって、作品興味の時間的スパン・メディア性が変わり続ける
・新しい技術/プラットフォームに通じたイノベーターにしか、文化的に価値ある表現ができない
・イノベーターがイノベーションも織り込み済みの「テクノロジー・コンテンツ」を作るしかない
文脈と原理の両方に耐えうる戦略
コンピューターが、人間にできることをエンパワーメントした結果、アートの手法が社会課題の解決として移行してきている
最も強い戦略
・シリコンバレーのアントレプレナーシップ
・自ら問題(文脈)を作り、自らのユースケースで解決すること
高付加価値を生み出す戦略
ユースケースを自ら語る詭弁的存在
→マーケティング戦略が生み出した産物&現代のアートの社会的役割
第4章 新しい表層/深層 p125-148
artes mechanicaeとartes liberales
産業革命以前、サイエンスとテクノロジーの間に明確な区別はなかった
・アルテス・メカニケー(artes mechanicae)
→メカニカル・アーツ(mechanical arts):自然を機械的に扱う学問 – 技術
・アルテス・リベラレス(artes liberales)
→リベラル・アーツ(liberal arts):人間の思想・精神の学問 – 芸術
テクネ(techne)の概念
テクネ(techne)とは
・アート(内側に抱く英知:リベラルアーツ・芸術・科学技術)と
・クラフト(外側に作用するための加工技術:技巧・手芸・工法)の
2つの意味を持つ言葉
テクノロジーの概念の成立
ラテン語のテクネ(techne)-ドイツ語のクンスト(kunst)-テヒニーク(technik)-テヒノロジー(technologie:テヒニークの学問として)-メカニカル・アーツという概念に一致-
技術という言葉
・実学的な知
・本来は機械的に世界を考える言葉
・物理学、身体動作、工学全般を指す言葉
デザインという言葉
・下(de)に、印(sign)をつけるという意味
・テヒニークにおける「対象物の設計」という一分野を指す言葉
エンジニアという言葉
・ラテン語のインジニウム(ingenium:天才)が転じて、エンジニア(engineer)となった
・テクノロジーから派生したものではない
デザイナーの起源
・時代:18-19世紀半ばの産業革命
・変遷:統合されたものづくりとしてのクラフトマンシップから、生産活動が分離
・デザイナーの役割:意匠について考える
・エンジニアの役割:機能について考え、機能を修理する
バウハウスの誕生
・時代:ドイツにドイツ工作連盟「デザイン専門学校バウハウス」が誕生する
バウハウスのデザイン教育とは
・建築学:古典的統合的デザイン教育
・グラフィックデザイン:印刷時代に必要なデザイン学(「印刷とコンテンツの分離」)
・プロダクトデザイン:大量生産時代に必要なデザイン学(「生産工程/コストと外見/機能の分離」)
→論理化
・時代に対応したデザインのあり方の論理化
・モノの論理化
・抽象的な意匠の論理化
・外見の論理化
→分離:デザインと生産工程の分離を加速
バウハウスのデザイン教育の運営者
・デザインは論理化することで誰でも習得可能であることを最初に示した人々
・モダニズム建築の発展のきっかけ
・デザイン手法をパターニングとその選択の問題として捉える発想
・タイポグタフィーに関わる知見
カンディンスキー:
パウル・クレー:
ヨハネス・イツテン:色彩学の大家
バウハウスの解散
・第二次世界大戦の前に解散
・教員・卒業生が世界に飛散し、工業デザイナーが世に羽ばたく
ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルト:ドイツの工業デザイナー
マルセル・ブロイヤー:ハンガリーの家具デザイナー
マックス・ビル:ドイツのデザイナー
産業革命以降のデザイン
・デザイナーは、大量生産品をデザインするための専門職種として、デザイナーは認められていった
・大型プロジェクトや高価格製品をデザインするだけの存在ではなくなった
1960年代以前のファッション業界
・洋服市場には大量生産品とオートクチュール(高級服:haute couture)のみだった
・パリ・プレタポルテ(高級既成服:pret a porter)コレクションが始まる
・高級既成服は、映像の世紀のマスメディアに乗って、世界中に届けたれた
・既製服にも関わらず、先進的なデザインと比較的購入しやすい点から、市場に歓迎された
・1970-1980年代、プレタポルテブームに乗って、ブランドデザインが誕生した
1970年のデザインという概念が変化する
・デザインと価値の乖離=ブランドの登場
・表層と深層の価値の二回目の乖離
ブランドデザインと消費者
・自己表現や自己実現の手段として、ブランド服を購入するようになっていきました
・実際の価値と、デザインによって高められた価値が乖離することになる
・その価値の差分を埋めるのが「ブランドの信用」
・この時から「ブランド=高いもの」というイメージがつく
・デザイナーが、意匠と技能の信用によって、富を稼ぐ職業になった
エンジニアの起源
・特権の誕生により、技術そのものが富を産むことになった
・発明者が多額の富を手にする環境が整った
・生産工程の一元化により、社会に安定雇用が生まれた
・以降、エンジニアは常に需要のある市場価値の高い職業であり続ける
コンピューターの登場。ITエンジニアが生まれ、コードによって、コンセプトと機能が接続された
・産業革命以降、私たちは表層と深層を分離して、人間の言葉やイメージによって繋いできた
・コードによって、コンセプトと機能が接続された
・製品のコンセプトを作る行為と、コードを書く行為の間に区別がつかなくなってくる
・表層と深層がコードによって計算で接続され、設計が担うべき最低限の機能や形については、コンピューターの補助によって、自動的に満たされるようになった
エクスペリエンス・デザイン
・人間のトータルの体験設計ができるエンジニアが重要になってくる
・リアルとネットが結びついた世界の全体性をデザインし、プログラミングができるかが重要
・ブラウザ上の動線
・リアルでの購買行動
・住居空間でに過ごし方
・どう生きるか
・ユビキタスコンピューティングの帰結
・その中で、カームテクノロジーが加速すれば、ツールは不可視的に存在し、デザインされた体験だけが残っていく
エクスペリエンス・デザインの設計指針
・掛け算の製品:製品価値に、他の膨大な数の体験に掛け合わせる
・実問題を解く
→デザイナーとエンジニアの立場が、どんどん接近してくる
→表層と深層を同時に設計することが、事実上不可分になる
→産業革命以前のクラフトマンの時代に、ものづくりの人々が戻る
表層と深層の再接続がもたらすもの
「メディア-デザイン-労働」の関係が変わる
・マーシャル・マルクハーン:物質としてのメディアがメッセージ性をもち、人間の身体の拡張性と結びつく
・J・J・ギブソン:デザイン(物事の形態)が人間の行動に影響するアフォーダンス理論
・カール・マルクス:物質的条件が人間の労働を規定する
・労働と富の関係:中央集権的再分配を経ないまま、自発的に富の再分配が行われる
第5章 コンピューテーショナル・フィールド p1491-167
メディアの歴史
・メディアの歴史は、自由度が高くなる方向で進化が進んできた
・壁画/石板の登場:紀元前4000年
・土偶/土器の登場:
・紙の登場:
・カンバスの登場:
・写真の登場:
・映像の登場:
メディアにおける2つの自由度(動的性質の向上)
1.コンテンツ的な意味での「動」への変化(静止画→動画)
2.メディア自体の可搬性という意味での「動」への変化(壁→石→紙→カンバス→写真→映画→テレビ→パソコン→スマホ)
動の記述
・フレームレート(大小):当人の動き
・エーテル速度(大小):物理空間における、流速による移動速度
※エーテル:モノを物理的に移動させる存在
西洋の自然を征服する発想
・モノに着目
・哲学や聖書によって、世界をリジッドに規定していく考え方
・猛威としての自然と、それに挑む人間という対比で世界を捉える一神教的な考え方に行き着く
・17世紀の哲学者フランシス・ベーコン
→ノヴム・オルガヌム:人間は自然の下僕・解釈者。自然を支配するには、自然の実態を知る必要がある
自然を征服し、服従させるという発想
・自然を征服し、服従させるという発想が、ニュートン力学によって「観察と真理が従来の哲学と接続」され、デカルトの幾何学と組み合わさった
・それが「実験科学」によって、世界の真理を追求する方針として、後世の科学技術思想に大きな影響を与えた
・西洋的なモチーフ:制御された自然
コンピューテーショナル・フィールド
東洋
・モノを取り除く要素としての空間(エーテル)に着目
・空間変化(間や場)に着目
・見えるものは不変で、見えないものは動いている(美意識の根幹-花鳥風月の文化に連なる-)
コンピューテーショナル・フィールド
・博士論文のテーマ:コンピューテーショナル・フィールド
・エーテル(モノを物理的に移動させる存在)を、物理空間で実装する場合には「物理場をいかに制御するか」が重要になる
・様々な現実の場を捉える「ひな形」になる表現形式
・モノと人間を区別せずに、一つのオブジェクトとして扱い、エーテル(周囲の見えないもの)的発想から現象をとらえていく東洋的な考え方
・物体と人間の二分法ではなく、物体と情報の中間インターフェースとしてある「場」
→場=コンピューターの計算で、場の捉え方が再現可能になる空間
・究極的には、物体も情報も、この場によって、一元的に記述可能である、と考える
・重要なのは、コンピューターを用いると、音も、電磁気も、アルゴリズムも、データ構造も、等価になること
・また、場の記述は、コンピューターでは簡単に扱える
→基本的な処理は、フーリエ転換によるホログラムの合成
・あらゆる場の概念は、統一的な場の記述法で描くことができる
第6章 デジタル・ネイチャー p171-207
20世紀のメディアがしてきたこと
・表現域値の設定:人間の感覚器がギリギリ違和感なく感じ取れる範囲に
・情報の複製:低コストで
→つまり、結局「人間中心主義」を脱却できていない
20世紀のビジュアル表現:24-60fps(1秒に24-60回程度の書き換え)
20世紀の音表現:20khz(人間の可聴域)
人間中心主義ではないメディア意識とは?
・人間の感覚器の写像の制限を取り払って見えるモノは何か?
・20世紀は、低解像度に限定されたイメージの中で、マスメディア上の現象が生まれた時代
・人類は、記録メディアと複製技術を手に入れた
・だがそれは、技術的な制約から、人間の感覚器程度の低解像度テクノロジーに最適化する形で生み出された
人間の感覚器程度の解像度からコンピューターを開放する
・すると、物質が本来持っている性質が再現可能になる
・光が音の表現に作用し、音が光の表現に作用する
・人間の感覚を超越した設計を行うことで、メディアが物質世界自体をプログラミングできるようになる
デジタルネイチャーの定義
デジタルネイチャーとは
・ユビキタスコンピューティングと、プリンティングテクノロジーによって、再構成され、
・人間がコンピューターを操り、コンピューターが人間を操る自然のこと
・両者の関係:上下ではなく共生
・人間の定義:計算機で処理されるアクチュエータ(認知的なロジックを持ったコンピューターにすぎない)
コンピューテーショナルフィールドの概念
・数式/ソースコード/プログラミング:「物質の内部機構まで含めた形質」と「取り巻く環境の形質」を接続する
・すべてのもの:場になる
・計算量:発展速度が増大する
・メモリ:記憶量が増大する
・DNA:生命にとっての究極の内部構造
・コンピューター:1秒に30億回計算し、インターネットによって永久記憶を可能にしている
→生命も場で記述される
2つのハードの問題
生命も場で記述され、人間とコンピューターの区別がつかなくなると、ハードの問題が残る
・存在の生成と消滅の問題
・数学と自然科学の動的接続
人間のインターフェースに近い部分では、むしろ、コンピューターの方が人間に合わせざるを得ない場面が増えている
・コンピューターは、人間をエンパワーする装置のように見える
人間とコンピューターの関係性
・人工物と自然物の二分法を超越した自然観を持たなければ、人間はコンピューターを認めることができない
・人間は、人間のインターフェースとして、いつまでも残っていく
人間とコンピューターの共生関係を考える現実的なフレームワーク
人間とコンピューターの上に、
・デジタルネイチャーというスーパーセットを仮定し、
・両者を横並びのサブセットにする
魔法の世紀の最終到達点
コンピューター科学という統一言語によって、
・この世界のあらゆる存在と現象(知能・物質・空間・時間を含む)が記述され、
・互いに感応し合うこと
落合陽一の活動の目的
・コンピューターの記述範囲を広げ、場と場・モノとモノが相互作用する可能性を切り開くこと
・「感覚の担い手」として人間を規定する
・そして「文化の紡ぎ手・保存装置」としてのコンピューターを規定していく
人間とコンピューターの役割
・感動の主体:人間
・文化の紡ぎ手:コンピューターと人間の共生
・保存装置:インターネット
→人間基準の解像度を超えた世界がもたらす、新しい知覚の可能性
・アートの定義:人間とコンピュータの境界を探査する行為
・感覚のアップデート:個人的な体験に基づく
未来という世界のあり方
・コードという言葉と、それを司る論理によって、
・モノを操り、
・私たち自身と環境を変えていく世界になる