中国語の起こり
- 中国大陸にもともと様々な諸語の文法(言法)があった
- 漢字が生まれた
- 漢字が中国大陸諸語の言語構造を変化させた
中国語の定義
- 中国語は本来一つではなく「漢字によってかろうじて統一された言語」
→中国語:単音節孤立語(1音1意味)。言語構造ではなく、漢字の構造を言っているだけ
→中国大陸の中でも多くの言語がある:北京語、広東語、客家語
- 現在私たちが「中国語」と呼ぶ言語は「漢字語」という孤立語のことをと指す
・漢字成立以前に中国語はなかった
・中国大陸諸語はもともと孤立語ではなかった
→漢字という「強力な政治言語」が周辺言語の構造に深く入り込んでいった
→周辺言語の語彙と文体が変形を開始した
東アジアにおける漢字の歴史
紀元前1400-1300年
中国の殷に文字が誕生
殷:古代宗教国家による宗教文字→「甲骨文字」「金文」
→文字の中に「古代時代の神話体系」「祭祀儀礼」「社会組織」が反映されている
→例:鉞(まさかり)=王、こざとへん=きざはし(神世界と人間世界をつなぐ橋。神が降りてくる梯子)
紀元前220年
始皇帝時代に篆書体(てんしょたい)が誕生
秦の始皇帝時代の誕生した篆書体の特徴
1.2つの古代性からの離脱
・脱神話性
・脱宗教性
→宗教文字から政治文字へ
→構成:直線と曲線(整理、簡略化)
→字画文字:散文的
2.同時に「古代宗教文字(宗教性と神話性)の痕跡」が残っている
→「甲骨文字、金文」の形状を損なっていない
4世紀
「隷書(れいしょ)」と「草書(そうしょ)」により古代性と政治性の相対化が進む
隷書(れいしょ)が政治文字をになっていく
4世紀
隷書から草書(そうしょ)が派生し、詩が誕生する
王羲之(おうぎし)に代表される草書(そうしょ)の誕生。公の政治家が個人的な痛みを表現
草書の特徴
1.横画が右に上がる:人間の身体的条件が反映され始める
2.筆画が省略される:政治的権威の規制からの脱却
→人間による本格的な書の歴史が始まる
3.文字が非政治的要素を含んでいく
→政治と対局の「個人の苦悩」「精神的、肉体的な弱み」を表現/開示しはじめる
→詩の誕生
草書の構造
・筆触(ひっしょく)に身体性が付与される
→筆画(ひっかく):起筆、送筆、収筆に人間の不定形な力が表現される
→書くこと=劇(ドラマ)という構造が生まれる
漢字の中に草書という私事叙述文字が生まれました。
その後、政治家が私事を表現し始めます。
それが、東アジア漢字文化圏での詩の誕生となりました。
古代宗教文字の痕跡を残しつつ、宗教性を排し、政治性を排してきた漢字。
最初は公的だった「書字」「筆画」という作業の中に、私的な属人性が流入していきます。
参考書籍
タイトル:日本語とはどういう言語か
2006年1月10日初版発行
発行所:中央公論新社
著者:石川九楊