原文
天の原
ふりさけ見れば
春日なる
三笠の山に
出でし月かも
古語の意味
【天の原】
大空。
【ふりさけ見れば】
遠くを眺めれば、という意味。
「ふりさけ見る」の已然形に、確定条件を表す接続助詞「ば」がついたもの
【春日なる】
現在の奈良市春日野町あたりの土地。
奈良公園から春日大社までの土地。
遣唐使の出発に際しては、春日神社で旅の無事を祈ったといわれる。
【三笠の山】
春日大社後方、春日山原始林の手前にある山。
御笠山とも御蓋山とも書く。
【出(い)でし月かも】
かも:奈良時代に使われた詠嘆の終助詞。
かつて見た三 笠山の上に昇る月を表しながら、唐の地で今見ている月を重ねています。
現代日本語翻訳:案
a.
私は大空の遠くを眺める。
そこには月がある。
私は想起する。
その月は奈良の春日の三笠山に昇っていた月と同じなのだ、と。
映像イメージの順序
①大きな空
②詠人がその遠くを眺める
③月がある
④夜だということが、読み手に伝わる
⑤その月は…(詠人の心の動き:対比)
⑥奈良の春日の三笠山に昇っていた月と同じ…なのだ…
現代日本語翻訳:推敲
私は大空の遠くを眺める。
そこには月がある。
私は想起する。
その月は奈良の春日の三笠山に昇っていた月と同じなのだ、と。
英語翻訳
I look far into the sky.
The moon has risen.
I imagine this moon is the same as the one that rose on Mikasa Mountain in Kasuga, Nara.
フランス語翻訳
Je regarde loin dans le ciel.
La lune s’est levée.
J’imagine que cette lune est la même que celle qui s’est levée sur le mont Mikasa à Kasuga, Nara.
スペイン語翻訳
Miro hacia el cielo.
Ha salido la luna.
Imagino que esta luna es la misma que salió en la montaña Mikasa, en Kasuga, Nara.